常に社会を挑発!スパイク・リー監督新作『ブラック・クランズマン』

常に社会を挑発!スパイク・リー監督新作『ブラック・クランズマン』

日本時間で2月25日、第91回アカデミー賞の発表があります。

私のアメリカ留学時代には、現地での日曜日、映画を学ぶ教授や学生が集まり持ち寄りパーティなどにしつつ、各自採点しながら受賞者を当てる、なんて風物詩もありました。

ブラック・クランズマン

今回楽しみなのは、スパイク・リー監督の新作『ブラック・クランズマン』(2018)が最優秀作品ノミネートされていることです。

日本では3月22日公開予定。受賞するかしないか、配給会社もヤキモキされていることと想像します。

早く観たいのですが、あくまでパッと見のテーストとして、タランティーノ監督が『ジャッキー・ブラウン』で取り上げた70年代の匂いがプンプンします。

1960年代の公民権運動が終わり、黒人が自身のブラックであることを愛でる、 髪をストレートにしたりせず、カリフラワーのように丸く整える、そんな時代に突入していたことが伺えます。

リー監督は監督賞候補にもなっています。現在御年61とのことで、 劇映画デビュー作品『She’s Gotta Have It』(1986)から数えると30年以上、第一線で活躍されています。

常に怒れる映画監督

監督は、常に人種問題から社会正義を貫くスタンスは変えないのですが、『ブラック・クランズマン』 もエンターテインメントの要素は残して魅せるという、映画のことは熟知されたマスター(巨匠)っぷりです。

1992年に映画『マルコムX』が発表された時、1960年代のアメリカ公民権運動から四半世紀経った今、いったい何が変わっているのかというリー監督の問題提起だったと受け止めています。

当時、マルコム役を務めたデンゼル・ワシントンが似すぎと話題になりました。実際は、マルコムXの方がやせ型でしたが。

今回は、2018年の文脈で見ることになります。ちょうどマルコムXが、「自己防衛のための暴力は暴力ではなく、知性と呼ぶべきである」と言ったように、相手と同じ土台で戦うのではなく、頭を使って上手(うわて)に出ろ、そういった示唆かと。だからこそ、40年も前の実話を取り上げ、今の世の中がどうあるべきかを、監督から発信したものと受け止めています。

スパイク・リー監督の制作会社は、「40 Acres And A Mule」(40エーカーとラバ1頭)と言います。これも、南北戦争で解放されたアフリカ系アメリカ人が、農地とラバ(馬とロバの交配種)を受け取れるという、実現することのなかった補償の内容であり、監督が一貫して人種差別にアラートを立てていることが伺えます。

白人男性以外の稀有な存在

2017年秋、ハリウッド映画界で#MeToo運動が広がり、2018年カンヌ映画祭でも女性監督の少なさや、女性の地位向上へのスポットライトが当たりました。

人種の観点からは、2015年、16年とオスカー受賞候補者が全員白人だったことを、リー監督も含め痛烈に批判(アカデミー会員が選出する制度のため)。2017年、作品賞本命と思われた『ラ・ラ・ランド』でなく『ムーンライト』が受賞したのは配慮の意図があったのか、とまで言われる事態でした。

それを考えると、リー監督が1980年代後半からエッジの利いた作品を発表し続け、第一線で活躍されていることは価値が高く、尊い行為にもなっていると思います。

名作『ドゥ・ザ・ライト・シング』

スパイク・リー監督の代表作の一つで、20年以上経った今も鮮烈な印象を残しているのが、4作目の『ドゥ・ザ・ライト・シング』。

スパイク・リー自身も、主演を飾ります。ペーソスあるキャラ、というと大げさですが、ややチャップリンに似た哀愁を感じます。

音楽や色彩にパワーが溢れていますし、人種差別に関心のある人、まったくない人、様々なレベルで出てくるのがいい。ニュースで見る暴動がなぜ起こるのか、という問いに対する答えも見えてきます。

サウンドトラックでは、パブリック・エナミーの『ファイト・ザ・パワー』がいつまでも耳に残ります。権力と戦え、というメッセージですね。

普段はニューヨークのブルックリンを拠点にしているリー監督が、今回のアカデミー賞出席のためロサンゼルスに向かうのですね。Instagramでは、前日の2月23日(現地時間)、書店で『 ドゥ・ザ・ライト・シング 』(書籍)のサイン会をするとの案内が出ていました。

動画にある“DAT’S DA TRUTH, RUTH”(“That’s the truth, Ruth”)は、映画のラジオDJの決めゼリフです。サミュエル・L・ジョンソンがこのような名脇役を演じているのが贅沢ですね。アフリカ系アメリカ人の話し方の特徴で、THがDに変わっており、Ruthは語呂合わせでしょうか。「それが真実さ、ルース」

2014年には、ロケ地が「ドゥ・ザ・ライト・シング・ウェイ(路)」に改名したというニュースも。

そんなわけで、私の中で『ドゥ・ザ・ライト・シング』『マルコムX』の勢いを超えるスパイク・リー監督作品には出合えていないので、期待して観に行きます。もちろん、デンゼル・ワシントンのご子息ジョン・デヴィッド・ワシントンが主演しているのも、楽しみ。