ブラック組織を炙り出す、『ピクニック at ハンギング・ロック』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

1975年の映画が4Kリストア版で蘇りました。オーストラリアの作品、ピーター・ウィアー監督の『ピクニック at ハンギング・ロック』です。

この映画に興味を惹かれたのは、ソフィア・コッポラ監督の『ヴァージン・スーサイズ』(1999)と比較されることがあるからです。思春期の女の子の独特な雰囲気や行動を切り取る感じ。そして死も隣り合わせだからです。

では、さっそくひと言です。

『ピクニック at ハンギング・ロック』へのひと言

社会の闇が見える。

閉鎖的コミュニティの話、面白いですよね。そして神隠しの話、面白いですよね。美味しいとこ取りが楽しめる作品です。

本作は、1900年のバレンタインデー、ハンギング・ロックへとピクニックに出掛けた名門女子学園の生徒のうち数名が、失踪するという話です。

そうすると、ジャンルとしては推理かサイコスリラーか、Sci-Fiか? 実は社会ドラマであり、風刺のようにも見えます。

話が展開するうち、この名門女子学園に組織的な問題、つまり人材面、金銭面が健全に運営できていない実態も明らかになります。そうすると、「女の子が失踪した」ことは一つの「ほころび」に過ぎず、もっと大きな歯車が狂っていくことが暗示されます。

校長先生とセーラ

100年以上前の時代設定で、階級制度を引きずっているところがあり、その違和感もあります。校長先生のヘアスタイル、見てください。既婚女性はミセス、未婚女性はミスで呼ばれる。このセーラちゃんなどは、現代に生きられる強いこころを持っております。

ぱっと見、アイドル映画のような雰囲気もありつつ、話は引き込まれるような要素を持たせ、さらにコミュニティの課題を炙り出す感じが、見事でした。

しかし、いったい何人が命を落とすのでしょうか。そういう話です。

文明のはなし

本作の設定は、オーストラリアがまだ開拓者にあふれていた1900年(「オーストラリア連邦」の誕生は1901年)。西部劇よろしく、革のブーツを履いて馬に乗った白人男性たちが、店の連なった集落を闊歩します。

そう、まだスニーカーは一般的になかったんでしょうね。寄宿舎の女の子たちが岩山を散策するのに、真っ白なドレスにコルセット(!)をし、レースアップブーツを履いています。起床したらすぐ他人のコルセットを後ろから締めるシーンがまるで数珠つなぎのよう。レディ(淑女)でいる努力がいかほどだったかと思います。身体の締め付けが精神の締め付けとリンクしていますね。

ドレスのことを構わずに、岩山に寝そべって読書や昼寝をする女の子たちが、実に可愛く幻想的!

腕時計は岩山ふもとで壊れてしまうし、電話もない、ヘリコプターもドローンもない。行方不明者を見つけるには何度も岩山に向かわなければならない。日が暮れたら操作は打ち切り。自分も命を落とすかもしれない。こういった時代には、捜索は本当に難航したでしょう。

監督と主演

最後に。女子生徒の中心にいたミランダを演じたアン・ランバート。あまり馴染みがなかったので調べてみました。

ウィラー監督が、アン・ランバートの出演していたFantaのコマーシャル(こちら)を見て主役に抜擢。1955年生まれなので、公開当時20歳くらいだったのですね。

役柄的に、自分のこと可愛いって分かっている感じがよかったです。

映画よりもテレビドラマへの出演が多いようで、『ピクニック at ハンギング・ロック』後のメジャーな作品への出演は確認できませんでしたが、2017年にあのロケ地を訪問する企画があったようです。

日本でも美少女として大人気だったことと思います。ヴィスコンティ監督の『ヴェニスに死す』が1971年公開で、スウェーデンの美少年が話題となりましたので、「美少年」「美少女」ブームの最中だったかもしれませんね。

一方でピーター・ウィアー監督ですが、2024年ヴェネチア映画祭で金獅子生涯功労賞を受賞されるとのこと。

https://twitter.com/EdwardHMO/status/1788833048311554132

昨年は俳優のトニー・レオンさんが受賞されました(記事)。ヴェネチア映画祭の人選は信頼できるものです。おめでとうございます!

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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