スパイのバイリンガル演出が光る、『無名』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

トニー・レオンが出演していたら、どんな作品でも観に行きます。というわけで、本日はチェン・アル監督の『無名』(2023)へ。2024年5月3日公開、英語タイトルは”Hidden Blade”(隠した刃)でした。内容はノワール風のスパイ映画ですね。

では早速、『無名』へのひと言です。

『無名』へのひと言

バイリンガルによるテンポのよさ。

終戦間近、1940年代前半の上海。主役の2人であるトニー、ワン・イーボーが日本の将校(森博之)と会話する場面がよくあります。

トニーは中国語、将校は日本語で話すのですが、お互いが理解できている前提。通訳を介すわけでもなく、お互いに母語で話す様子が、小気味よい。

この時代、やはり生身の人間が通訳するか、語学ができる人間がより活躍するという図式もあるわけです。また、将校もこの地での駐在が長く、中国語は理解できるというわけです。

ワン・イーボーが日本語堪能な役どころとして頑張ってくれましたが、もちろん日本語ネイティブな観客から見れば、ネイティブレベルには届きません。そんな中、むしろ話さない方が、貫禄が出る。その役割を、トニーが見事に引き受けていました。

話は時間軸が交錯して展開しますので、ちょっと頭が混乱します。プロットのぶつ切り感は、レビューを見る限り、必ずしも好意的に受け止められたわけではなかったようです。

15年間にわたる戦争

平和を生きる日本は、世界で起きている戦争に対しては傍観者にすぎません。

しかし、日本の戦争は1931年の満州事変から数えると15年続きました。赤ちゃんが高校生になるほどの時の長さです。決定的なことがない限り、終戦は難しいというのが分かります。

そして、侵略者の立場でした。失う必要のない多くの命を失いました。戦争になった途端、加害者も被害者であるように思いますが、戦争を起こさない、加害者にも被害者にもならない、平和の尊さを伝えていくのが戦後80年の日本の役割だと、心から思います。

タイトルの謎

制作国の中国でも原題は「無名」で、日本語と同じように「名がない、知られていない」という意味なのだそうです。映画館に足を運んだ時点では、主人公が知名度がない一般人なのか?、全く知られていない史実が暴かれるのか、くらいに想像していました。

Wikipeadia英語ページでは、直訳としてAnonymous(匿名の、名前を隠した、身元不明の)とありました。あー、むしろこちらですね。

つまりスパイ映画ですがら、今目の前で話しているAさんの後ろに、Bがいるかも、Cがいるかもしれない。Bに寝返ったら命を落とすかもしれない、Cが守ってくれるかもしれない、自分のイズムを突き詰めたら、一生家族や友人と再会できないかもしれない、そういう状況です。

「あなたが誰なのか、最後までわからない」というのがタイトルの意味するところですね。平たい単語に置き換えると、「仮面」「工作員」「秘匿」などが当てはまるかもしれません。

トニーの「いい人」感が出て、スパイに見えない

主役二人の体当たり演技、よかったです。1997年生まれのワン・イーボーと、1962年生まれのトニー・レオンですから、親子ほど離れています。正直、2人で争う場面は、「トニーのスタントがんばれ!」と心で応援してしまいました。

色白のワン・イーボーが怒ると、般若の面。あー怖かった!

最後までハラハラできるように作られていますので、お楽しみに!

映画公式サイト:https://unpfilm.com/mumei/

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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