思うこころの自由…『ベニスに死す』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
今日は旧作の『ベニスに死す』。ルキノ・ヴィスコンティ監督の1971年の作品です。
私はこれを20代で観たときの感想は、”sick (sickening)”です。主人公が美少年を思う気持ちが、ただただ気持ち悪かったのを覚えています。同名小説の映画化とのことですが、ヴィスコンティ監督が同性愛者という認識があったので、小児愛的なものに吐き気というか。2020年代にして暴かれたジャニーズ神話と同じですね。Wikipeadiaには、監督がバイセクシャルとありました。
時を経て、今観ると、やはりちがったものが見えてきますね。
『ベニスに死す』へのひと言
思うだけなら、自由。
本作品には、ビョルン・アンドレセンというスウェーデンの美少年が登場していました。タッジオという役柄で、主人公アッシェンバッハ教授から羨望の眼差しを受けます。
眼差しだけなのです。
近い空間にいたり、すれ違ったりとありますが、それ以外は遠くから眺めているという、本当にプラトニック。思うこころは自由です。映画の特性として、観客はアッシェンバッハ教授の視線となって、タッジオを遠くから近くから、ガン見します。ですから、観客の視線は不自由。
気持ちが募り、隠れて名前を呼ぶ。タッジオ、タッジオ、タッジオ。公衆で彼の名前が呼ばれると、意識が向いてしまう。これが恋ですよね。
この映画でなぜ美少年に傾倒してしまったかは、想像でしかないのですが、主人公は妻と娘をなくし、心が弱った存在です。そして美を追求する作曲家でもある。生きる力を見出すのに、美少年が必要だったとも思うと、単にヘンタイだと片付けるのも違うのかもしれません。
貴族の滑稽さ
本作は冒頭からこのアッシェンバッハ教授の服装が異質です。そしてベニスでバカンスを過ごす方々の服装も同様。ヴィスコンティ監督ご本人が貴族だったことも関係するでしょうか。食事にはスーツやドレス、女性は巨大な帽子。夜のバーでタキシード。外出には帽子、浜辺でも白ジャケットに革靴で時間を過ごします。
バカンスでも、衣装がたまりませんね。人は見た目9割!
ちなみにタッジオの水着はボーダー模様のロンパース式で、かわいいです。
そして、すべてを壊す疫病
この件はすっかり忘れていたのですが、COVIDと同じことが起こります。そう、疫病で理由もなく人が倒れていく。誰も何も知らないうちに。
ただの美少年傾倒映画ではなかったことを、思い出させられました。
死の恐怖から遠ざかろうとする時、若さが目に飛び込んできます。そして、生命力にすがりつく。それは滑稽にも映る、人間の有り様かと。教授を演じたダーク・ボガードは、本当に名演でしたね。
この作品が嫌いで終わらなくて、よかったなと思います。
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