孤立無援の妊婦を観客が応援、『ローズマリーの赤ちゃん』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
本日は旧作、『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)です。ロマン・ポランスキー作品で、ホラーと聞いていたので、エイリアンのような赤ちゃんが生まれるのかと思っていました。
実際は、悪魔崇拝(サタニズム)の話です。そしてジャンルとしては、サイコスリラーでしょうか。
『ローズマリーの赤ちゃん』へのひと言
若きミア・ファローの好演!
1945年生まれのミア・ファロー。公開当時、23歳だったことになります。役柄は、俳優さんと結婚した無垢で可憐な若き女性、ローズマリー。
本当に可愛らしくて、ファッションアイコンのよう。冬のコートにチェックのスカート、夏用ワンピースなど、作品を通して全部お似合いなのです。オープニング時はおかっぱ。
その後、作品途中からセシルカット(ベリーショート)になるのですが、顔が蒼白に。妊娠が分かって、きっと体重も増えて幸せいっぱいの時期であろうに、彼女はどんどん痩せて、ツイッギー(=小枝)のようです。
そんな彼女を追い詰めていく様子が、脚本の面白さでもあります。ローズマリーが一つずつアイデアを思いついては実行し、潰される、の繰り返し。誰が敵なのか、彼女がイカれているのか、周りがイカれているのか、分からなくなるのです。
そして最後が秀逸でした。『シャイニング』(1980)をご覧の方は、その意味が分かるでしょう。
言葉遊びも面白い
外国語の映画で、簡単に人名が覚えられないことはよくありますが、まずローズマリーと夫ガイ(ジョン・カサヴェテス)が引っ越した先で出会うのがカスタベット夫妻(Castevet)。この名字は、意図的に馴染みのない言葉の組み合わせを、オカルト風につけているそうです。日本でも、『犬神家の一族』という推理小説/映画がありますが、コンセプトは近いかと。
そして、薬草の名前も出てきます。一般的に薬草には詳しくない私たちも、アニス草(anise)なら聞いたことはあるでしょうか。本作に出てくるのはタニス草(tannis root)で、これも架空の植物です。ここにも知っていそうで知らない、ありそうでないものが使われています。
途中で、前述のカスタベット氏の名前について、ローズマリーが謎解きをするシーンもあります。夫の名前ロマン・カスタベット(Roman Castevet)を並び替えると、別の名前になる。とにかくよくできています。
古いもの、不気味なもの
昔のものは、ときの記憶を背負っていることもあり、不気味に映ることがあるでしょう。アメリカは比較的歴史の浅い国ではありますが、マンハッタンで1880年代に建てられたザ・ダコタ(The Dakota)という高級集合住宅が本作の舞台となっています。四角いビルディングは、中庭からも彩光できるようになっています。
屋内の撮影はセットとのことですが、絨毯から家具の重厚な色まで、息が詰まる感じ。プロダクション・デザイナーは売れっ子のリチャード・シルバート(Richard Sylbert)さんで、ダスティン・ホフマンの『卒業』(1967)やウォーレン・ベイティの『シャンプー』(1975)も担当されました。ポランスキー監督とは『チャイナタウン』(1974)でも組んでいます。
歴史的建造物を取り入れて、悪魔崇拝の映画を作ってしまう監督はぶっ飛んでいますが、ヒット作になったことはよかったかと。
今日はこの辺で。