抑えた演技が光る、『西湖畔に生きる』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
『西湖畔に生きる』(2023)を見てきました。グー・シャオガン監督、2023年に東京国際映画祭コンペティションで上映され、24年に配給された作品です。予告編では中国の山奥深くの映像もあれば、胡散くさいビジネスに翻弄される感じも映し出されていました。
『西湖畔に生きる』へのひと言
主人公の抑えめの演技がいい。
本作は、ある山村の父親が出ていってしまった家庭での、母親と成人した息子の物語。
ジアン・チンチンが演じる母親は、小雪さんみたいに美しく、幸薄い感じが醸し出されています。苦労人、女手一つで育児をした、立派なお母さん。
このお母さんが、マルチ商法に引っかかってします。洗脳されているので、ここはオーバーリアクションもやむなし。演技はわざとらしいレベル。
一方で息子(ウー・レイ)は、冷静にこの状況を見て、止めようとします。この洗脳ビジネスに潜入して、内情を把握する勇気もあります。摘発に向けて動こうともします。観客が見たら、がんばれー、と応援するところですね。
終盤、母を背負って山に登るシーンなど、どれだけ体力を消耗したかと思いますが、そういうピュアな心に観客も突き動かされます。
マルチ商法の「手が届く」幸せ
自信のなさにつけこむビジネス。どんな人でも、特段心が弱くなくても、陥る可能性があるかと思います。商品を自分でまとめ買いして、再販業者として売っていく、たくさん売ると次のステージに行ける、そんな感じです。すごく高いわけではなく、ちょっと努力すれば買える。人に勧めて無料で配ったりする。自分の扱える範囲でできる範囲ならまだしも、貯金を崩したり、大きな資産を抵当に入れたりしまう人もいます。低所得層の人たちには、抜け出せなくなる罠です。
ここでクスッと笑ってしまったのが、入り口が「足裏シート」だということ。私も、2000年代に中国人の方々とお仕事をしていた時、皆さんが日本で大量に「足裏シート」を買っていかれる姿を見ていました。LIONの「休息時間」だったかな? 私が使った時は寝ている間に取れてしまったし、使用感としてすごく効いた感じはなかったです。が、足裏信仰は日中共通だったということですね。
本作は中国の山間部の美しさを収めていますし、その中に生きる人間の営みが小さなものであることも伝わってきます。ただ、資本主義を目の前にして圧倒的に不利な立場にある人たちに対して、救いがない。このまま自然の中で、茶を摘み続けるという時間だけが、予測されます。そこがオープン・エンディング(観客に結論を委ねる終わり方)になっているかと感じました。
今日はこの辺で。
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