意味のある冗長さ、『aftersun/アフターサン』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
日本公開時に見逃し、少し遅れて『aftersun/アフターサン』(2022)を観ました。シャーロット・ウェルズ監督作品。父と娘のロードムービー、ということでお涙頂戴は困るので触手が伸びなかったのですが、観てよかったです!
父親が19歳か20歳の時に生まれた娘さんですね。劇中では、兄妹に間違われるシーンもありました。ウェルズ監督の体験をもとに作られているとのことです。
『aftersun/アフターサン』へのひと言
時間を記録した映画。
これはスコットランドの父と娘が、トルコに旅行に出かける1、2週間を記録したものです。MiniDVで撮った映像が残っています。父と母は離婚していることが分かりますので、娘がお父さんとの時間を海外で過ごす、特別な時間ということですね。
この父カラム(ポール・メスカル)と娘ソフィー(フランキー・コリオ)がサイコーです。ソフィーはすきっ歯で、子どもでいられる最後の歳という感じ。少し『レオン』を彷彿させますが、本作は親子の設定です。
そして、ワンシーンが長いんですね。本来ならば楽しい瞬間で溢れているはずの旅行で、あまり生命力を感じないような映像や、ただ主人公が見ただろうものをそのまま写している映像もあります。それがリアリティを感じさせます。
日焼け止め(アフターサン)を相手の背中に塗る。はしゃぎながら海に入って、その後少し波と戯れる。まるで死人のようにベッドで眠る。絨毯屋さんで二人で黙ってお茶を飲む。そのような一見無駄なシーンに溢れているのです。リゾートだから基本的にリラックスしているのですが、寂しさを感じさせる空気感もあります。無生物、例えば洗濯物や水面を写したショットもあります。
人生に流れる時間って、こんな感じですね。(スマホがないっていうのも素晴らしい。)
クリストファー・ノーラン監督なら無数のカットでつないでくるな、と思うようなところ。面白かったのは、ノーラン監督が『aftersun/アフターサン』を絶賛していることでした。
子どもの残酷さ
撮り溜めたビデオの中で、ソフィーは父親にこう訊ねます。「11歳の時、将来何をしていると思った?」(When you were eleven, what do you think you’d be doing now?)
この無邪気な質問、カラムにはイタイですね。劇中ではカラムが太極拳をしたり、物思いにふけったりと、心を整えているような様子が見られます。
そして、中盤では観客がいる中で、親子決裂のシーンも。もちろん喧嘩くらいするのは分かりますが、適当にあやしたり、取り繕ったりということがありません。ここは転換シーンなので、ぜひお楽しみください。
英語がガチ分からない!
ポール・メスカルはアイルランドの俳優、フランキー・コリオはスコットランドの俳優です。
同じ英語ながら、ヒアリングが結構難しい。でも何度か聞いていると、特定の母音が聞き取れていないことが分かります。youngがヤングではなくヨング、nowがノウ、sideがスィド、ダブルスがドゥブルス、というように。
また、会話のスピードもネイティブですから、容赦ありません。英語の字幕が出ないと、聞き取れなさそうです。
一つ、この作品はサウンドトラックも評判のようです。同じ時代を過ごした人たちなら、歌詞まで分からなくてもグッと来ますよね。
今日はこの辺で。
映画公式サイト:https://happinet-phantom.com/aftersun/index.html
追伸:ポール・メスカルは『異人たち』にも出演しています。