愛を感じる瞬間、『自由の暴力』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

いやー、強烈でした。ファスビンダー(ライナー・ベルナー・ファスビンダー)監督の作品は、20代に観て脳みそが吹っ飛んだ記憶がありますが、今回はレトロスペクティブで『自由の暴力』(1974)を観にいきました。

原題は「Faustrecht der Freiheit」で、「力が正義」(権力を持つ者が正当化される)という意味だそうです。

『自由の暴力』へのひと言

主人公は、「愛」も「搾取」も経験する。

本作は西ドイツ時代に作られていますが、ドイツは教育制度からして、ブルーカラーとホワイトカラーが分かれている国です。肉体労働に進む人と、知的労働に進む人を、15歳の時点で分けるからです。

主人公のフランツは、労働者階級で、読書をしたこともなく、安い酒場に通っています。服装から違っていて、ボタンや襟のある服を着ません。

ロト(宝くじ)を当てた後、男娼として裕福な男性と一緒になり、「愛」の力を知ります。その後、「搾取」の現実も見ていきます。

もちろん、本作の1行概要を作るのだとしたら、搾取についてなのかもしれません。でも、主人公なりに愛を感じることができたのは、彼の人生にとても幸せなことだったと思うのです。

しかし、「搾取」された時に、自分を信じる力が足りませんでした。「自分は教養や知識がなくダメなんだ」が前提だと、そういった現実が来ざるをえません。

ですからとても物悲しい本作ですが、一瞬でも主人公に救いがあったんだと思いたい。まさかの監督ご本人が、このフランツを演じています。

どん底への突き落とし方は、西のケン・ローチ、東のファスビンダー、と言える作品でした。そして、『マイ・プライベート・アイダホ』もこの作品にインスパイアされたのでは、と感じずにはいられませんでした。

ショットの美しさ

今回観てよかったなと思ったポイントの一つは、ショットの構図の美しさです。ファスビンダーの遊び心なのか、画面の端や奥に裸の男性を入れてきたりもあるのですが、天井や階段、鏡などを効果的に使っていて、「あ、このショットいくらでも見ていられる」と言える美しいものが少なくありません。『東京流れ者』に近い感覚かな。

もちろん写っているものも美しくて、使う人を選ぶコテコテ調度品、真っ白なスーツ、海外の雑踏も含めて見応えがあります。

ここで忘れてならないのは、本作がフィルムで撮影されたということ。今のように、素人が湯水のように撮影できて0円、という時代ではないので、職人も俳優も念入りに準備して特性のあるカメラを回しての映像。これだけの眼福をフィルムに残してくださったことに、本当に感謝です。

今日はこの辺で。

映画公式サイト:https://fassbinder-ff.jp

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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