世界のムラカミ作品の楽しみ方『めくらやなぎと眠る女』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
ピエール・フォルデス監督『めくらやなぎと眠る女』(2022)を観てきました。もともと予告で知り、観てみたいなと思ったのです。ちなみに本作のベースとなった6つの短編は読んだことがありません。
『めくらやなぎと眠る女』へのひと言
村上が世界の人だという証拠。
少し話が逸れますが、映画界では黒澤明監督というレジェンドがいたため、黒沢清監督がデビューした時に、「え、親族?」に疑う人が少なくなかったです。同じ苗字というだけで。
村上春樹さんが世に知られたのは『ノルウェイの森』(1987)ですが、デビューは1979年の『風の歌を聴け』。その時はすでに、村上龍さん(『限りなく透明に近いブルー』(1976)ほか)が文壇に登場していました。
そう、私にとって、同じ村上という名字の日本の小説家、というのが村上春樹さんだったのです。
村上さんは海外に暮らしていることが多く、あっという間に日本の村上から世界のムラカミに変容されました。
今回は初アニメ作品だったとのことですが、これからも、村上春樹原作の映画がもっと出ていいと思うのです。映画化したいかどうかは、作家の意図によりますが。
日本人のアニメ顔
日本はアニメ作品も有名だし、私たちの作り出す主人公は、まんまるお目々だったりします。ルフィ、アンパンマン、コナン、プリキュア。
それはあくまで私たちの憧れなのかもしれず、私などは切れ長の目をしています。
よく、日本人を含む東アジアの人たちの切れ長の細い目のことを、”slant eyes”と言います。ソーシャルメディアではたまに侮蔑のジェスチャーで炎上したりもしますけれども。
今回は、実際の顔をトレースしたようなリアルがありました。日本が舞台でしたので、東アジア的な人の顔立ちで安心しました。
主人公の一人が北海道に行くシーンがあるのですが、そこで出会う女性が見た目も話し方も森星さんにそっくりで、驚き。モデルにしたのかな?と思ってしまいました。
災害とニッポン
世界に出たムラカミさんですが、本作品は東日本大震災を含め、地震がテーマになっています。そして、地震に立ち向かう術はないという世界観もあれば、地中のミミズを落ち着かせれば大丈夫、というどこかで聞いた昔話のような設定もありました。
村上春樹さんの小説と同じように、日本だけど日本じゃない、これがまさにテーマだろうと思います。村上春樹さんの小説は日本語以外の言語で読まれていることになるので、日本語とは異なった理解やニュアンスで読むだろうことを考えると、何かホンモノか分からない。
ですから、本作もauthenticity(ホンモノであること)は関係ないで、楽しませていただきました。日本が、右側通行の車道だったり、ネオンサインが逆になっていたりしましたけれども、ロスト・イン・トランスレーションの感覚で見るといいと思います。実写でなくアニメというのも、絵本のように感じました。
今日はこの辺で。
映画公式サイト:http://www.eurospace.co.jp/BWSW/