同質性やんわり強要のニッポン、『ぼくのお日さま』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

奥山大史監督の『ぼくのお日さま』(2024)。予告編はかなり見た気がしますが、決め手は池松壮亮さんでしょうか。とても静かで、よい映画でした。

『ぼくのお日さま』へのひと言

先生の多様性、必要。

「え、そこ?」と言われそうですが、ある意味日本がまだまだ発展段階にあることが分かった感じです。

本作は、小6のタクヤ、中1のさくら、そしてスケートのコーチである荒川先生の3人が織りなす日常を描いています。タクヤはさくらが気になり出して、さくらは荒川先生が気になり出す。そんな可愛い風景が続きます。

この物語の転換点は、荒川先生の恋人が男性だと分かったときに訪れます。性的嗜好はコーチの良し悪しとは関係ないのですが、恋心をいだく身には受け入れ難い事実でもあるのでしょう。

ただ、もう少し言えば、小さい頃から身近な存在として接していると、人の理解が追いつくこともあり、寛容になれるものです。タクヤには吃音がありますが、からかっている子はいません。車椅子を利用している先生がいたり、外国籍のお友だちがいたりするように、男性として生まれ女装趣味の先生がいたり、女の子を好きな女の子がいたりしてもいい。いろいろな背景の人がもっと身の回りに溢れると、理解はしやすくなるようになると考えています。

その中で、教師やコーチという教える立場の人たちの中に、あまりにも多様性が少なく、先生が社会の縮図になっていない日本の現状が残念です。

フランスの新首相など(仏新首相 歴代最年少34歳のガブリエル・アタル氏に任命)、まだまだ政治家でも性嗜好が話題にされたりとありますが、その人に期待している役割や能力に支障があるかどうか、は切り分けて考える必要があります。

また、日本の学校へアシスタント・ランゲージ・ティーチャーとして派遣される英語ネイティブスピーカーがいますが、入れ墨については応募時にかなり細かくチェックされるそうです。彼らの入れ墨はファッションの場合もあり、自身のルーツへの誇りであることもあります。入れ墨=893って、いつの時代でしたっけ。もちろん、最初は驚くかもしれませんが、そう言ったことを身近な人から学ぶ機会は、もっと作れるのではないでしょうか。

撮れそうで撮れない画

本作はスケートリンクでのシーンが多く、よく被写体に密着して撮っているなぁ、しかも外からリンクに注ぐ光の柔らかさがいいなぁ、と感じさせるものでした。監督が撮影していたと言うから驚きです。

中西希亜良さんも越山敬達さんもフィギュアスケートを習っていたそうですが、越山さんは下手くそなところから始まるので、できるようになると「おぉ!」と思わせます。元選手役の池松壮亮さんは猛特訓されたそうで、「できます」感が漂っているし。

そして、大人と子どもの中間にある若い役者さん二人。この時期じゃないと撮れない、新鮮な表情です。男の子の方が少し子どもっぽく、でもペアで踊るシーンでは腰に手を当てたりもするので、内心ドキドキしながら、バディとして訓練していく感じが実に可愛い。誰もが経験する思春期は尊いもので、この作品を撮ってもらった二人はこの上なくラッキーですね。

カンヌ映画祭で上映

海外マーケットを目指す作品は、どの映画祭に出すかを決めてから制作に入ります。本作はカンヌで初上映されました。

カンヌは少し派手というか、豪華な側面があるので、『ぼくのお日さま』とはほど遠い印象もありました。しかし、あの『PERFECT DAYS』もカンヌで盛り上がったので、「何も起こらない日本映画」という期待には応えたのかもしれません。海外のオーディエンスには、前述した閉塞感が残ったのではないかと想像します。

日本語で『ぼくのお日さま』と言うと、どんなイメージを彷彿させるでしょうか。私は、「見守ってくれるもの」「あたたかい光」「希望」みたいなものを感じます。

英語タイトルは “My Sunshine” で、少しちがいますね。最愛の人を指すときに、my sunshine(私の太陽/太陽の光)と言ったりします。『ぼくのお日さま』は、特定の人を指しているようには思えません。

ただ、中西希亜良さんはフランス語ができるようで、最近CHANELのプロモーション動画にも出ていたようです(Instagram)。CHANELを使う年齢層からはかけ離れていますが、お顔立ちもきれいで、俳優業に進まれるのかもしれないので楽しみです。

今日はこの辺で。

映画公式サイト:https://bokunoohisama.com/

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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