ラブコメ吹き込んだ新しさ『すずめの戸締まり』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

新海誠監督の『すずめの戸締まり』(2022)が公開されましたね。もう破竹の勢いと言うか、TOHOシネマズの箱どれだけ占有しているか!というくらい、人が入っていました。家族連れから、友だち同士から、一人から、いろいろ。

『すずめの戸締まり』へのひと言

いろいろな思いが埋めきますが、選ぶならこれです。

少女漫画を組み合わせたら、明るくなった。

女性を主人公にしている時点で、よく宮崎駿監督の一覧の作品と比べられたりもすると思うのですが、本作の主人公鈴芽(すずめ)ちゃんは、恋する女の子、というのが特徴的です。

つまり、ナウシカのように世界や人類のために戦うという崇高なミッションも持っていながら、「○○くんカッコいい」「○○くんが好き」という動機で動いている。ここが、この作品を重くしすぎないのにいい設定だと思います。

戦争よりも地震と隣り合わせのニッポン

本作は言うまでもなく、地震大国であることが前提の物語。そして2011年の東日本大震災から10年経ち、いわば集団記憶を扱っています。

すずめちゃんは4歳のときに東北で被災し、高校生になった役柄です。たしかに幼い頃の記憶がギリギリある現在の高校生であれば、大震災のことを覚えているはず。私自身も、あの日どんな1日だったかは、ハッキリと覚えていますし、現存する多くの日本人のお一人お一人に、刻まれている記憶だからです。

日本も1945年の終戦までは、戦争で人の命が奪われる体験をしました。その後、戦争をしない時代を続けていて、人の命が脅かされる一番は、自然災害になってきました。

新海監督の前作『天気の子』(2019)とも少し似ていたところとして、「コントロールできないものを、コントロールしようとする」テーマがありますね。とは言っても自然には抗えません。祈りを込めて儀式をしてきた歴史があり、人間は100%負けるのです。

アニメーションでもリアル

セルロイドをパラパラやるアニメーションを記憶する世代としては、新海監督のアニメーション作りはまったく別物であり、現実と虚構の間のような感じがします。

壁紙みたいな紫色の銀河も出てくるし、東京のお茶の水やスカイツリーはそのまんまな感じがするし。2020年代を生きる私たちにとって、どちらもリアル。

でもすごくいいなと思ったのが、すずめちゃんのエネルギッシュな感じとか、人の動きが丁寧に再現されているところでした。階段降りる時に少し行きすぎて曲がるとか、細かいところも好きです。

あとすずめちゃんが恋するお相手は、宗像草太(むなかたそうた)くんと言うのですが、毛量のあるロン毛で、まつ毛がバサバサしていて、色白で泣きぼくろがある。まるで石川五右衛門の若い頃のようです!

本当のオーディエンスは誰?

さて、新海監督は1973年生まれということで、ガチ同学年ですが、この映画は誰をターゲットにしているのか、は面白い点です。

登場人物も、10代高校生や、20代大学生、40代すずめのおばさんなど、いろいろ出てきますが、笑えたのは大学生がかける1980年代の昭和ソング。松田聖子さんの『Sweet Memories』(1983)河合奈保子さんの『けんかをやめて』(1982)国生さゆりさんの『バレンタインデー・キッス』(1986)など、私の記憶にもある歌ばかり。これは新海監督の好きだった曲ではないかと想像。

https://www.youtube.com/watch?v=ahhgzCQyFsQ

『けんかをやめて』の歌詞は竹内まりやさんなのですが、「けんかをやめて 二人をとめて 私のために争わないで もうこれ以上」ってすごい歌詞ですね。歌詞の続きを読むと分かりますが、女性が二股しているのに、「けんかをやめて」を言えるって、かなり性悪かもしれません。

物語に重要となるイス

話は逸れましたが、物語の中では大学生が懐メロを聴く設定になっていますし、声の出演では若い俳優さんを使っているので、とてもフレッシュな作品に仕上がっています。中高年も若年層も、共感ポイントがある。1本観るととてもエネルギーを持っていかれますが、素晴らしい作品でした。

『すずめの戸締まり』公式サイト https://suzume-tojimari-movie.jp/

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

おすすめ