映画料金の値上げ発表が痛い今日この頃
6月からの映画料金が1,800円から1,900円に上がるという、最近のニュース(TOHOシネマズのお知らせはこちら)。これまでも高いという印象はあったけれど、「え…」というのが正直な感想です。
TOHOシネマズによれば、「アルバイト人件費を中心とした運営コストの上昇や各種設備投資への負担増」とありました。シネマコンプレックスが出てから映写やチケット販売は効率化されましたが、たしかに家賃上昇やデジタル化の関連コストは避けられません。
フランス/ドイツの映画鑑賞料金
ワタクシの独自リサーチ(現地在住者へのヒアリング、2019年5月時点)で、三か国の映画料金について調べてみました。まずフランス、ドイツは以下の通りでした。
- フランス(パリ):12.20ユーロ(約1,500円)
- ドイツ(ベルリン):都市や作品によって、概ね8.00~12.00ユーロ(約980円~1,470円)
ドイツはスクリーンショットを入手したのですが、こんな感じです。
Parkettはいわゆる一般席、Logeはロジェと読むと思うのですが、見やすい後方「ボックス席」みたいな感じで、割高です。
別の映画館の例では、月曜日、火・水曜日、木~日曜日で値段がちがうところもあるようです。いわゆるダイナミックプライシングでしょうか。
アメリカの映画鑑賞料金
私が米国留学していた1990年代後半は、地方映画館で6.50ドル、昼間だと3.50ドルくらいが相場でした。いくつかの国ではマチネ(昼の興行料金)があります。アメリカでは平日午前は営業していない所も多く、午後が安い価格設定、夜と土日は通常料金です。
- アメリカ(サンフランシスコ)ある新作&日曜日の例:午前9.50ドル、午後11.50ドル、夜13.50ドル。価格は、①都市部/郊外/田舎、②新作上映/同作品の1~2か月遅れの上映、③一日の時間帯(午前/昼~夕方/夜)、④IMAXなど特殊な劇場か否か、によって違う。
私の友人は、日曜朝の回で、『アベンジャーズ』を9.50ドルで観られたそうです。ウェブで料金を確認していた時に、一番高かったのはこちら。21.99ドル、換算すると2,420円です。これだと割引の映画が2本観られますね。
アメリカも映画大国とは言え、家の大きなテレビスクリーンで映画を観ている人もたくさんいるので、 映画館の興行業績は苦戦しているそう。一つ面白い話を聞いたのが、 昔からの「ポップコーンとコーラで儲ける」作戦の他に、「サブスクリプション」(定額制)モデルも導入しているとのことです。1年の契約で、 毎月12~15ドルを支払うと、月にチケットが2枚と、ドリンクやスナックの割引が受けられるそうです。月2本ってかなりのペースですよね。
映画が映画であるために
映画が映画である理由、映画を映画たらしめるものは何か? これは映画が誕生した時からずっと問われていることです。映画を必ずしも映画館で見るとは限らない現代の文脈では、「大きなスクリーンで、不特定多数の人と見る」体験に価値を見いださなければ、自宅のPCでも十分なはずです。2018年大ヒットの『ボヘミアン・ラプソディ』ライブビューイングは、その目的を果たしたかもしれません。いや、あれは映画ではなく(ほぼ)ミュージックビデオだったでしょうか。
あとは新作をすぐに見たい場合。本に例えるなら、ハードカバーで読みたい人向けです。単行本まで待てる人、電子書籍でよい人は、もっと安い価格で楽しめるからです。同じく昨年ヒットの『カメラを止めるな!』は新作としての話題が止まずにロングヒットでしたね。
蓮見重彦先生が、「映画はオペラのようになる」と2008年に予言されたこと、的中したようにも思えます(『映画崩壊前夜』参考URLはこちら)。つまり「たしなみ」として、教養のある人が高いお金を払って見に行く、古典的価値のあるもの。そして行かない人は、「あぁ、昔映画っていう娯楽があったよね~」と話題にするもの。
映画がすぐにそうなるとは思いませんが、少なくとも今回の値上げは、2019年秋の消費増税のタイミングですればよかったのに、と思います。映画館に足を運ぶ際、レディースデーを頼りにしそうな予感です。