撮影監督と言えば、クリストファー・ドイル

私は映画を見るとき、①監督で決める、②俳優で決める、③人のおススメで決める、のいずれかだ。

①で言えば王家衛監督がその一人だが、王監督の作品でお馴染みの撮影監督が、クリストファー・ドイル氏だ。今思えば写真家の蜷川実花さんに少し近いとも思うが、デジタル本格到来前に、香港の街を肉眼よりも鮮やかに美しく、独特のセンスで切り取った人、と認識している。『欲望の翼』『恋する惑星』『天使の涙』など、1990年代に続々と人気作を撮った。蛇足だが、香港を飛び出して撮った「ブエノスアイレス」(1997)でも、ドイルカメラは健在だった。

満島ひかりさんがボーカルを務めたモンドグロッソの「ラビリンス」(2017)も、香港が舞台。あのカラフルな高層アパートは、鰂魚涌 (Quarry Bay) にある「益昌大厦」(Yick Cheong Building)。

「ラビリンス」を見ると、たしかにカラフルな香港が横たわっているが、ドイルのザラザラした質感と違って、何か少し優しさがある。調べてみると、撮影監督は神戸千木(かんべちぎ)氏ということが分かった。岩井俊二監督の作品を何本か担当しておられるようで、優しさの理由がなんとなく頷けた。

今後、この撮影監督が撮った作品なら見たい、そう思える作品を増やしていきたいなと思う。映画学(Film Studies)では、よく“gaze” (視点、眼差し)という用語を使うが、作品において誰の目線かというのは大切だ。鳥や神の視点のこともあれば、主人公の視点なこともある。制作から言えば、gazeは撮影監督の視点で、それゆえに私たちは撮影監督が切り取った映像を見ているということになる。ドイルの眼に同化し、心地よく酔いしれたく、王家衛作品を見てしまう。

 

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