見どころはジョニデ、『グッバイ、リチャード!』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
旧作『グッバイ、リチャード!』(2018)を観ました。ジョニー・デップ主演です。原題は『The Professor』つまり大学教授の話です。
このポスター、いいですね。何がいいかと言うと、文献の積み重ねによってできた学界や自身のキャリアから、一歩踏みだす役柄を端的に表現しているからです。
『グッバイ、リチャード!』へのひと言
売り方が難しい映画。
私たちの多くにとって、ジョニー・デップは海賊だったりするので、大学教授と言われてもすぐにピンと来ません。ジョニー・デップはこれまで、インテリ層の役が少なかったかもしれませんね。本作ではアメリカ東海岸の歴史ある大学で教鞭を取っています。自宅のインテリアも重厚で、裕福な感じが漂います。
本作はそんなリチャード教授が余命宣告されたのちに、これまでの制約や忖度を捨て自由に生きるという設定です。シリアス?と思いますが、黒澤明監督の『生きる』にも少し似ていて、残された時間の中でやりたいことをやっていく人に変わっていきます。ただ、本作が「ドラマ/コメディ」とジャンル分けされているのも違和感があります。お笑いのコメディというわけではなく、実際はこの破天荒な行動をするリチャードがユーモラス、ということです。売り方が難しいと思ったのは、死期の近い人物を描くヒューマンや、恋愛を描くラブロマンスでもない、ゲラゲラ笑えるほどの内容でもないという点です。
本作の監督はウェイン・ロバーツですが、2016年にデビュー作”Katie Says Goodbye”を発表しており、2作目がこの”Richard Says Goodbye”(当初の原題)でした。つまりなぜかグッバイ・シリーズだったわけですが、ジョニデを以てしても全米(非公開)を除いた世界興行収入が314万ドル(3億円台前半)、残念ながらまったく当たらなかったことになります。2017年の『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』と比較すると、全米で1億7200万ドル、世界で6億2200万ドルの収入となっていますから、その差は一目瞭然。ウェイン・ロバーツ監督はこれ以降作品を発表しておらず、日本での2020年公開も、おそらくジョニデ主演が売りだったことが想像されます。作品に恵まれないジョニー・デップを裏付けるような一作となってしまいました。
ちょっとだけ『アリゾナ・ドリーム』(1992)を彷彿とさせる作品でした!
教授かチンピラか
このリチャード教授が自由に生きるという設定だとしても、大学という組織での現役教授ということを考えれば、かなりの飛躍があります。例えば授業中に飲酒したり、学生からドラッグを分けてもらい摂取したり、授業の続きをバーで実施したりです。学生も「クール(カッコいい)」と反応したりしますが、ちょっと逸脱しているなぁと言う印象でした。
その上で、ジョニー・デップの役どころの幅広さにも感服しますが、彼にはどうやら社会一般からは外れた役が似合う気がします。これまであまり優等生の役はなかったですし、彼自身も好んで非アイドル的な役柄に取り組んでいました。
そう言えば、この時期世間の注目を集めたアンバー・ハードさんとの裁判のやり取りでも、「怖い人」と思えるような出立ちが多かったですね。(それでも好きですけど。)
目で演技
私にとって、ジョニー・デップの一番印象深いパーツといえば、やはり目です。
今回の作品でも、前半と後半では目がちがう。主人公が自分の弱さを出せるようになったということもありますが、からだも弱っていく様子が目に見て取れます。ここがジョニー・デップの凄いところ。目の周りを黒く縁取ったメイクが、さらに病人ぶりを加速させていると思います。
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