メディアのリアルが面白い!『リアリティ・バイツ』(1994)

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

当ブログでは新作と旧作を両方扱っていますが、1990年代の同世代ムーヴィーと言えばこちら!『リアリティ・バイツ』(1994)です。

公開当時、すでにウィノナ・ライダー(『シザーハンズ』)とイーサン・ホーク(『いまを生きる』)は大スターでした。だからこそ、3人目がポイントになります。

さっそく本作へのひと言です。

『リアリティ・バイツ』へのひと言

ベン・スティラーの奥が深い。

公開当時は、ウィノナとイーサンに注目のアイドル映画的な消費をしましたが、この映画は監督であるベン・スティラーに注目することが、より理解を深めるように思います。

ベン・スティラーと言えば、『メリーに首ったけ』(1999)のようなラブコメや、『ナイト ミュージアム』シリーズのような子ども向け映画が思い浮かびます。喜劇も悲劇も顔で表現ができるので、得な存在ですね。

そして俳優業以外に監督業もしており、本作でデビュー。その後『ケーブルガイ』(1996)『ズーランダー』(2001)と続きます。

そしてなぜ監督業ができるかと言うと、1994年以前に、人気テレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』に出演、脚本担当していたという…。もっと遡れば、ショービズ一家に生まれたと言うことがありますが、『サタデー・ナイト・ライブ』を押さえておけばいいと思います。

『リアリティ・バイツ』でも、ベンはテレビ局役員の役ですし、番組制作の表から裏まで熟知しています。この文脈が、映画単体では読み取れないところですが、おそらくアメリカの観客には伝わっている部分。ベン・スティラーが馴染みの業界を映画にした、そんな位置づけかと思います。

SNSやスマホの普及前、映画のライバルはテレビ一択でした。この作品でも、終始テレビのチャラさを伝えていますし、誠実そうに見えて浅はかなところもあるテレビ側の人間を演じている監督は、大物と言えましょうか。

「リアリティ・バイツ」(現実は厳しい)とタイトルにある通り、大卒の若者が職探しに苦労する様子、日本で言えば就職氷河期的な状況をテーマにした作品、とも見えるのですが、物語だけを追うと、メディアについての考察が見えなくなってしまいます。特に、劇中で主人公がホームビデオを回しているのは、カメラの小型化、私生活の記録など、映画史にも影響を与えていくからです。

では、その他の小ネタも展開していきましょう。

旬のウィノナ・ライダーをフィルムに閉じ込める!

主人公のウィノナ・ライダーは公開当時22〜23歳。はい、誰にでも青春期の瑞々しさや醜さがありますが、大学卒業したての役とも時期が重なる彼女の魅力を、丸ごと映し出していますね。

冒頭、彼女が大学卒業式で、総代としてスピーチを務める様子が映りますが、角帽のタッセル(房飾り)が強風によって、何度も口に入ってしまう演出が、たまりません!

Photo by Karolina Grabowska

風貌は小柄(ネット上情報では161cm)でショートヘア、鼻とあごがツンと出ていて、本当に可愛らしいです。女優さんとしてベテランですが、初期作品の方がこの可愛さがよく出ている。『シザーハンズ』(1990)や『ナイト・オン・プラネット』(1991)もご覧ください。

ナイト・オン・プラネット

ウィノナと同時期、フランスではジュリエット・ビノシュが同じく可愛らしさを振りまいていましたが、ウィノナにはボーイッシュな魅力がありましたね!

お約束の三角関係

ポスターを見ただけでも分かるかもしれませんが、男性2人、女性1人が出てきて、古典的な三角関係に発展します。

初見ではあまり気づかなかったのですが、最後にくっつく2人を最初から見ると、やはりその結びつきは強固な気がしますね。

ウィノナがハンディカムでドキュメンタリーを制作しているのですが、相手にカメラを向ける、そして編集する行為は、やっぱり魂が相手に向いているのだと感じます。

その辺りの描写、どこまで意識的か分かりませんが、べン・スティラー監督の匙加減が見事と言うものです。

1990年代の世界観

作品を見ると分かるように、主人公の二人はタバコを欠かしません。そして、自分に迷い他人に迷い、刹那的に複数の異性と関係を持ち、HIV /エイズ感染と隣り合わせです。フレディ・マーキュリーを含む多くのミュージシャンや芸術家がエイズで亡くなり、世界中が悲しみました。

そしてアフリカの飢餓を何とかしたいなど、地球規模の課題を考えている若者らしさも、1980年代からの流れでしょうか。同時に、GAPに代表される大量生産が行われていました。

今のSDGsを指針に生きている若者の親世代も、同じように社会正義を考えていたことが分かります。このアメリカ、テキサスの地においても。

そして映画の最後、自己啓発の分野で世界的に知られるアンソニー・ロビンズ氏の映像に出くわすとは。最高! 1990年代前半には、邦訳されるような名著をすでに数冊、発表しておられました。

映画をすべて歴史と位置付けて観るわけではないのですが、約30年の時を経て観ると、当時の世相は伝わってきます。そんな空気感を切り取ってくれた『リアリティ・バイツ』が好きだ!

(おまけ)2022年5月、アメリカではテレビシリーズ化が進行中とのことです!(出典
(おまけ2)『リアリティ・バイツ』25周年のMovie Walkerの記事はこちら

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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