無秩序のイタリアの魅力、『墓泥棒と失われた女神』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
『墓泥棒と失われた女神』(2023)、ノーマークでしたが日経新聞の記事をふと目にして、早速観に行きました。アリーチェ・ロルバケル監督です。
『墓泥棒と失われた女神』へのひと言
フェリーニと同じイタリアのリズムが流れる。
『墓泥棒と失われた女神』は1980年代のイタリア、主人公が訪れる街ではカーニバルが行われています。日常と比べてこちらは非日常。歴史と人のエネルギーを感じます。
この映画を観て、フェデリコ・フェリーニ監督の作品を見直したいと思った人が何人もいらっしゃることでしょう。人が行列を成すように練り歩いていて、そこに別の人がスイスイとその列をものともせずジグザグと自由に進んでいく。無秩序感に包まれた空間が広がります。口から思わずこぼれる、「なにこれ」。
歴史で何度も見た国、考古学を学ぶ人にとっては憧れのイタリア。そこに墓泥棒なんて低俗な仕事を組み合わせてくるセンス。そして、この墓泥棒をする主人公は、きわめてパーソナルな人探しという案件を抱えています。数千年の歴史ではなく、数年の歴史のなかに閉ざされ、かつ翻弄されています。このギャップたるもの。
ごちゃ混ぜ感がたまりません。
ここ数年、イタリア映画で記憶に残る作品に出会えていなかったので、この空気感を作り出すすごい作品に遭遇してしまったと感じました。
キャストのいい塩梅
イギリス人の主人公アーサーを演じたジョシュ・オコナーは、先日『チャレンジャーズ』(2023)で観たばかり。愛らしくもとぼけた感じが最高です。墓泥棒が外国人で主役という設定も、いいのか悪いのか。彼の良さは、主人公にしても強すぎないところだなと感じます。
そして、イザベル・ロッセリーニ。日本を起点とするならば、彼女は「イタリアの樹木希林」かと。おばあちゃん感がよかった。宣伝でも『ブルー・ベルベット』が代表作とされていたように、ほどほど出演作がありながら正直それが一番有名かと思います。映画監督と女優の間に生まれた娘さんゆえ、美しさはピカイチ。ランコム(香水会社)に長く起用されていた時の画像がこちらです。
その他、脇役の素晴らしさ。アーサーが心惹かれるイタリア(カロル・ドゥアルテ)も可愛かったです。誰もが認める美人ではなくても、観客が「気になる」「思わず見てしまう」存在感を持った方ですね。
イタリア史、ギリシャ神話などの知識があれば、より楽しめる部分もあります。
今後もイタリア映画に期待したいと思います!
今日はこの辺で。