夏の一日はきっと長い、『君の名前で僕を呼んで』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
今回は、Amazonプライムの旧作より、『君の名前で僕を呼んで』(2017)です。話題作だったのに、見るのが随分遅くなってしまいました。
では早速、ひと言です。
『君の名前で僕を呼んで』へのひと言
40年前の、ゆったりした時間が流れる。
舞台は1983年のイタリア。研究で夏休みを過ごすためにアメリカからやってきた大学院生オリヴァーが、教授の息子であるエリオの部屋を間借りするところから始まります。
エリオはもちろんアメリカン・ミュージックに乗ってダンスパーティーで踊ったり、頭もちょっとリーゼントみたいにして1980年代を楽しんでいます。オリヴァーは背も高く、ショーパンにスニーカーを履く、コンバース野郎。Tシャツでなくボタンダウンを着ているところが、ちょっとおしゃれさんです。
もちろん私も1980年代を経験した人間として、今と様変わりしているなと感じるのは、コンピュータもスマホもなかった時代だということです。余暇の過ごし方といえば読書。川遊び。バレーボール。野外での食事。昼寝。自転車で街へ。そんな毎日です。
ルカ・グァダニーノ監督はお調べしたら1971年生まれということなので、私と同世代。1980年代の空気感をよく捉えた作品だと感動しました。
私たちは時代劇を見れば、物事の進行がゆっくりだなぁと思います。物を運ぶにも、人が動くにも、情報が届けられるのも、本当にゆっくり。ただ、このゆっくりは、数百年遡ることなく、1980年代でさえも続いていたなぁと思うわけです。
例えば誰かがアメリカから訪ねてきたら、「よく来たな」となりますし、国際電話をかけてくれば高くつくと分かる。お別れの時が来れば、コミュニケーションを続けるのが難しいのは自明です。
ティモシーじゃなきゃできない!思春期小僧
この映画を今見ると、驚くことにティモシー・シャラメよりもオリヴァー役のアーミー・ハマーの方が先に名前が出てきます。ティモシーが初主演とのことなので、彼にとっては当たり役だったのでしょう。フランス語も英語も堪能なところが、よく生かされていました。
公開当時、ティモシーは22歳くらいだったと思いますが、17歳の混乱した男子を好演していました。大人でもあり子どもでもある、成熟しているように見えるけれど、あどけないところもある。言葉少なに、精一杯生きている17歳に、自身を重ねた観客も多かったでしょう。
起承転結に優れた脚本
話の想像がつく人もいるかもしれませんが、本作はビタースウィートな青春物語です。そして、起承転結の作り方が本当に上手。細かくは書きませんが、始まって承、転、結と、それぞれに角を曲がる感じがあります。もちろん4等分されているわけではありません。例えば、承の部分は50分くらいから始まります。
さらにいいのは、父親が大学教授ということもあり、家の中での会話も文学的。詩を読んだり、物語を読んだりするのですが、それがまた主人公の心の内とバッチリ重なったりして、わざとらしい演技をするよりも100倍刺さるのです。
この作品のポスター、顔をあえてギリシャ彫刻のように撮っていたので、観る者にどういう感情を想起させたいのかが分からなかったのです。作品を観ると、そういう美しいものへの憧れとかも脈々とあったりして、知的さを感じるものでもあります。
男子校のじゃれあい
17歳の少年宅に、24歳の大学院生が来るわけですが、男子校ってこんな感じだろうなと思わせる可愛さがあります。距離が近まったり離れたり、じゃれあったり、大声で馬鹿騒ぎしたり、並んで自転車を走らせたり。
タイトルにある、「君の名前で僕を呼んで」は読んで字の如く、お互いを呼び合う時の合図です。始めはちょっと自己愛強そうという印象がありましたが、この物語の重要な局面でもあり、前述したビタースウィートな結末へと集約されていきます。
え、続編があるんですか? ぜひぜひ観たいので、心待ちにしています。