厚盛ひまわりに沸く、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展(10月18日まで、上野)

厚盛ひまわりに沸く、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展(10月18日まで、上野)

バンクシー展に続いて、日時指定の美術鑑賞です。イギリスずいてますな。

美術展をなぜ日時指定にしないのか、常日頃疑問に思っていました。2015年の鳥獣戯画展(東京国立博物館)では、絵巻物3分のために2時間以上立って並びました。並んでいるうちに人が増え、この写真を撮ったことを覚えています。また、2017年の「怖い絵」展(上野の森美術館)も、日曜の夜出かけて1時間待ちのうえ、初詣レベルの混み具合に絵を見るどころじゃないという体験もしました。

日時指定や整理券導入の壁はまだまだあると思うのですが、時間を守れる方が多数ですし、この時代、混み具合の予測も計算できるはずです。どうかどうか、主催者の皆さん、鑑賞者を「意味もなく立って待つ」疲弊から解放してくださるよう、お願いします。

さて、当初3月3日開幕だったロンドン・ナショナル・ギャラリー展は、6月18日からとなり3か月以上の延期。グローバルなパンデミックですから、持ち主にもよくご理解いただいたのだと思います。お互い国立なので、日本美術の何かと交換したりするんでしょうかね?

展示室に入るまで

工事中で、がちゃがちゃしている上野駅公園口。工事用のコーンに並んで、ピンクのウサギががちゃがちゃ感をさらに増しています。土日は家族連れが多く見られました。

駅を出て、一番最初に見えてくるのが「国立西洋美術館」です。ル・コルビジェの美しい建物と、ロダンの彫刻のある庭。何とも贅沢です。日時指定チケットを持った人しか入れないため、人の行列などは見られません。

日時指定のチケットは、土日の午前から売れていくため、皆さん朝から鑑賞して、ランチして帰ろう、みたいな方が多いのかな。金曜日、土曜日は夜9時まで、月曜休館、それ以外の曜日は午後5時30分までですので、必然的に勤め人は土日になってしまいます。夕方の枠で向かいました。

絵画は富の象徴

ロンドン・ナショナル・ギャラリーは1824年に設立されているので、もうすぐ200年を迎えます。当時、裕福な銀行家が個人宅に所蔵品を飾ったのを政府が買い取ったのが始まりと言われています。銀行家が財を成すというのは、もう過去の話かもしれませんが、どの時代も芸術にはパトロンの存在が欠かせないようです。これまでのパトロンの一覧を見ると、当たり前ですが全員男性でした。

展示入口で、本場の入口気分を味わいます

私は1990年代にテート・ギャラリーに行った記憶があるのですが、今「テート・ブリテン」と呼ばれる美術館はヘンリー・テートさんという砂糖精製で成功した実業家が設立した、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの分家みたいなものです。パトロンとして所有している美術品を寄贈したかったテートさんですが、ナショナル・ギャラリーの所蔵スペースが足りないということで、別の場所に新たに建物を建てることになったと聞きます。

さて、今回の展示は7つのセクションに分かれていて、イタリア(ルネッサンス)→オランダ→イギリス肖像画→グランド・ツアー(イギリス人のイタリア留学)→スペイン→風景画→フランス近代と流れていきます。西欧を駆け巡りますね。

肖像画は大変面白く、写真がない時代の自己顕示欲の現れでもあり、画家に描かせるという意味では富の象徴でもあります。例えばこちらヴァン・ダイクの作品、姉妹の妹(右)の結婚にあたり、天使が祝福しているという内容で描かれたものです。

「レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー」(ca. 1635)https://www.wikidata.org/wiki/Q3937508

肖像画の大きさも、男性の立ちポーズなどは高さゆうに2メートル超えもありますし、この絵のサイズに見合う家に住む必要がありますものね。階級社会のリアル。

グランド・ツアーのお部屋も大変面白く、イタリアの名所の絵がいくつもあります。当時、イギリスの良家のおぼっちゃまくんたちが芸術の都イタリアに留学に行くのが習わしだそうで、それに付随する観光旅行が「グランド・ツアー」。留学のお土産にイタリアの絵を買い、自宅の居間に飾れば会話も生まれるため、絵には明確な機能がありました。スタバの「You Are Here」コレクションと同じです。

「ひまわり」は生で見るべき

美術鑑賞の醍醐味の一つは、時間を超えることだと思うのですが、今回も1400年代の作品から見ることができます。時空を超え、東京で作品と対峙できていることに、自然と感謝の気持ちが湧きます。

例の「ひまわり」、ゴッホは7点制作しているそうです。私は新宿のSOMPOひまわり生命の美術館で見ていますが、あれは第4作で、今回展示している第3作の後継だそうです。

3作目は、ゴッホが気に入って自身のサインを入れています。

本作品を自分の肉眼で見た方がよいと思われる理由は… ずばり絵の具の量です。すごい厚盛。ひまわりなのに、黄色でなく黄土色なところも、驚きます。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/fe/Vincent_van_Gogh_-Sunflowers%281888%2C_National_Gallery_London%29.jpg

そうそう、展示内の混雑具合は、どの絵にも5-6人群がるような程度で快適でしたが、「ひまわり」だけは二重に人が溢れていました。

こちら、ぷっと笑ってしまったインスタスポットは、会場入口にあります。ひまわりをこんなにてんこ盛りして似て非なるものにしたのは誰だ!?(撮る勇気なし)

教科書もしくは百貨店的な鑑賞

今回、一つの美術館の所蔵品をお借りしている性質上やむを得ないのですが、好きな画家の作品があったとしても1点もしくは2点しか見られません。

最後のフランス近代美術セクションには、日本人にも馴染みが多い画家が多く、セザンヌ、モネ、ルノワール、ドガ、ゴーガンなど巨匠が1点ずつひしめき合います。「もっと見せて~」と叫びたくなること必至です。

すべて日本初公開の62点でしたが、2周しても1時間で鑑賞できました。同行者とおしゃべりもできない環境ですから、早い方はもっと巻きで見られるでしょう。

展示を出たところの特設ギフトショップ。遠慮がちに撮ったらブレてた。

1,700円払って1時間で終わってしまうのはちょっと物足りなかったのと、かと言ってギフトショップに入るために列に並ぶのはちがうなと思ったので、同じチケットで入れる常設展にも足を伸ばしました。こちらにも錚々たる傑作が並んでいて、さくさく見ても同じく1時間かかりました。お時間ある方は、常設展オススメ。全然密じゃないし。

常設展にいる方々には、「私たち『ひまわり』狙いで来たミーハーじゃないよね」というような、勝手な親近感を覚えます。同時に、西洋美術は日本が礼賛し、常に追い付きたい存在、憧れとコンプレックスを感じてきた対象であるという背景もあると思うと、不思議な気持ちになります。

10月まで楽しめます(大阪では11月~翌1月)

チケットはすべてオンライン販売ですので、PCやスマホが苦手な方には、どうか周りがヘルプして差し上げて下さい。ここが変わらないと、日本のデジタルトランスフォーメーションはさらに遅れます。

https://twitter.com/london_2020art/status/1270635371127164929/photo/2

三密を避けた展示は利益度外視になるかもしれませんが、鑑賞する側からはとても安心して、本来の鑑賞に集中できる利点があり、感謝しています。日時予約して、お楽しみ下さい。