サチモスの元祖、ジャミロクワイはもう一歩社会派

2018年のFIFAワールドカップでよく聴いた、サチモスの「VOLT-AGE」。紅白歌合戦では審査員長谷部さんの前で歌ってくれて嬉しかったですが、サッカーの応援には どうもテンポが合わず、せっかくの「ボルテージ」が上がらなかったとも評判でした。

「和製ジャミロクワイ」で世に出たサチモス

サチモスをいいなと思った瞬間、ジャミロクワイ好きの方からお叱りを受けることがあります。それは20世紀と21世紀のアーティストを比べることなので推奨しませんが、「Virtual Insanity」を収めたジャミロクワイのアルバム「Travelling Without Moving」(1996)はファンクのジャンルで最も売り上げたギネス世界記録を保持とのことで、やはりリスペクトすべき存在。このアルバムは、 日本で は本国イギリスよりも2週間早く発売されたことも注目です。

サチモスは20代後半のグループなので、ジャミロクワイを聴いて育ったメンバーもおられます。1990年代後半は小学校低学年の頃だったと思われ、リアルタイムでファンだったかは分かりません。2010年には日清カップヌードルのCMでまた有名になっているので、こちらの方が記憶にあるかもしれません。ギャグのセンスはさすが日清さんですが、あのセットが再現されていて、本人が登場するのですから、ファンには嬉しいものです。「あのセット」は「あの肉」に相当する市民権を得ているかと。

https://www.youtube.com/watch?v=xwGA8B1d5G0

ジャミロクワイのファンの方々が、「和製ジャミロクワイ」を認めないというのならばどんな理由かと気になりました。私は音楽の知識が乏しいので、歌詞から見たところ、社会テーマが浮かんできたのです。

「ヴァーチャルなインサニティ(狂気)」を90年代に歌にしていたジャミロクワイ

ヴァーチャルという言葉は、2019年の私たちであればすんなり分かりますが、1996年には「?」でした。私自身も、当時調べた記憶があります。ヴァーチャルの反対はリアルで、よく「仮想」と訳されました。ヴァーチャル・リアリティ(VR)が言われ始めた時代です。

ジャミロクワイのヒット曲「Virtual Insanity」のサビの部分です。

Futures made of virtual insanity now
Always seem to, be governed by this love we have
For useless, twisting, our new technology
Oh, now there is no sound for we all live underground

Jamiroquai, “Virtual Insanity” (1996)

歌詞の和訳も専門外なので、「名曲から学ぶ英単語」「【歌詞和訳】Jamiroquai「Virtual Insanity」歌詞の本当の意味を解説」などを参考にさせていただきました。

1行目の「未来はバーチャルな狂気で作られている」、2~3行目に「新しいテクノロジー」に魅了される自分たちについて言及し、4行目には地下の音のない世界に住む自分たち、とまああのセットのような無機質な世界を見せてくれます。ジェイ・ケイ氏も2013年に「未来を予見させるような曲」であったことをインタビューで語っています(出典)。

これに対して、サチモスのヒット曲のサビをいくつか見てみると、歌詞の意味よりもリズム重視だということは分かりますが、やはり自分ベクトルが強調されている気がします。

I’m so cool He’s so cool

She’s so cool We cool And you?

Suchmos, “YMM”

ブランド着てるやつ もう Good night
Mで待ってるやつ もう Good night
頭だけ良いやつ もう Good night
広くて浅いやつ もう Good night

Suchmos, “Stay Tune”

Everything is Everywhere
拙い 興 苦悩
Everything is Everywhere
癒えない そう you know?

Suchmos, ”808”

ジャミロクワイの少し深いところ

ジャミロクワイを野放しに褒めたたえるつもりもないのですが、このアーティストの社会的なメッセージは注目してよいと思います。

アーティスト名が「jam」(即興などの「ジャム」)と「iroquai」(北米の6つの先住民国家で形成されるイロコイ連邦 Iroquois のイロコイ)の造語であることは、知られています。ジェイ・ケイの「かぶり物」も、ネイティブ・アメリカンの影響を受けていて、スピリチュアル・パワーが得られるものとのこと。角の生えたアイコンも「バッファロー・マン」と名付けられていますね。批判の対象になったこともあったそうですが、精神に共感し、注目を集める役割として考えると、総合的にはプラスの効果があったと思えます。

最近の「かぶり物」は、2017年「オートマトン」で見せた、LEDピッカピカのヘッドギア。絶滅危惧種を表現しているそうです(出典)が、ポケモンにこういうキャラクターいなかったかな…。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f8/Jamiroquai_2018_Coachella18W1-131_%2842057948751%29_%28cropped%29.jpg

私自身、アーティストはさまざまなメッセージを表現してよいと考えているので、ジャミロクワイのようなビジュアル・音楽・社会性と複合的に語れるアーティストは骨太な感じを受けます。外国の歌はどうしても社会性までくみ取れないことが多いのですが、日本のアーティストにも、恋愛や関係性を超えたメッセージを歓迎したいと思います。

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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