小泉環境相と100日ルール
政治家の小泉進次郎さんが環境大臣に就任されたのが、9月11日です。8月に結婚を発表されてすぐに、ニューヨークの国連で行われた気候変動に関する会議に出席されました。
こちらの動画での発言(開始30秒くらい)に注目です。
“I just became the Minister of Environment, just ten days ago. Nice to meet you.” (私が環境大臣に就任したのはわずか10日前です。皆さんに会えてうれしい)
これを聞いた時に本当にビックリしました。日本でもアメリカでも、「自分が初心者だということを言わない」よう教えられていたからです。
例えば、日本ではお客様のところに行く際に、「やったことがない」は禁句でした。アメリカでも、学生時代CVを作るにあたって、どんな小さなことでもそれらしく、嘘にならない程度に盛ってリストアップするよう、添削してもらったものです。“Fake it till you become it.”(できるようになるまでは、できるフリをしろ)ということわざもあるくらいです。
そのため、アメリカ人の友人にこの質問をぶつけたところ、面白い答えが返ってきました。
私「自分が新人なんて、あんなプロフェッショナルな人たちの前で言っていいのかな」
友人「でもさー、いきなり新しいポジションに就いて、自分の部下の方が専門性が高くて、“お手並み拝見”ってプレッシャーを感じることは、このくらいの立場の人にはあるよね。だからむしろ、そういう瞬間あるあるって、共感を得たんじゃないかな」
私「なるほどね、国際会議に出る政治家や専門家なんて、学歴もあればハイレベルの機関でバリバリ働いてきただろうから、このオーディエンスに対してそう言うことは意味があったかもね」
友人「そうそう。新人と言うことで、他人に過大な期待を抱かせないという効果もある。新人と言っておけば、期待されない分、何か大切な発言をした時の評価も高くなる」
もう一つ、小泉大臣は突っ込んだ質問をされました。先ほどの動画の4分30秒くらいから見られます。 フィナンシャルタイムス(FT)記者から、「今後半年や1年間で、石炭火力発電をどう減らしていくか」 と具体的なことを聞かれました。
小泉大臣「Reduce it.(削減します)」
記者「How?(どうやって?)」
小泉大臣(しばし沈黙)「I just became the Minister last week, and I’m discussing it with my colleagues and staff of the Ministry. We have said, the Government, not just the Ministry of Environment, that we are going to reduce it. (私は先週大臣に就任したばかりだが、同僚や省の職員とも議論した。環境省としてだけでなくわれわれは政府として「削減していく」と表明している)」
記者はある程度の知識や経験を持っているようです。特に海外メディアは、日本が石炭火力発電から脱していないことを、幾度も取り上げていますから。ここで絶対に「分かりません」とは言えない雰囲気ですね。
小泉大臣の答えは、「就任したてなのにもう議論を始めているのか」と肯定的に捉えることもできますし、「就任したばかりだから、と言い訳に逃げるのか」「政府がやると言ってるからやるんだ、と権威的な感じ」と否定的に捉えることもできます。
ここで友人の言葉を借りるならば、
友人「政治家は、専門性というよりはpeople skills、つまりよい人を集めたり束ねたりするのが得意なはず。専門家に『わたしを小学生だと思って説明して』と説明させ、その後それを自分の言葉で伝えるようにできる人たちだよ」
この時の模範解答はどんなものとなるか、考えてみました。
例えば「削減方法と目標はこれからすぐにでも作るところだ。私の周囲には専門性をもった 優秀な チームがおり、議論を続けていく。あなたのようなメディアの方も含め、いろいろな方の意見を伺いながら、実践に注力していきたい」という感じはいかがでしょうか。
さて、小泉大臣が就任してから2か月が経とうとしています。
友人「新人にも100日ルールというのはあるよ。その役職についてから100日以内に功績を上げる、ということ。そうでなきゃ、印象に残らずに忘れられる」
小泉進次郎さんは「忘れられる」という人ではないですが、環境大臣就任後、何か新しい取り組みを打ち出せているかどうか。リミットは年内くらい、期待したいと思います。