芸人先生2 #9 かまいたち流 人の心をつかむプロデュース術
「ぼくらかっちりしすぎ。派手さがなく、地味な印象」と自己分析するかまいたちのお二人。キングオブコント2017年で優勝経験があり、漫才とコントの二刀流、毒を吐く芸風で知られています。そんなお二人が1967年創業、社員24,000人の大手家具メーカー、ニトリさんを訪問。はい、お値段以上の。札幌で創業当時の会社の看板を見たら、似鳥と書くんですね。これまでの放送以上に戦略的な色を見せた「かまいたちVS大手家具メーカー 攻めて1歩先へ講座」(2019年6月3日放送分)をお届けします。
今より先に進むには、攻めるしかない
部屋に入るやいなや、「思ったより年上っぽい方もいらっしゃいますね」「若手の社員に言うんかと思ったら、しっかりした大人のひとが多い」と、中堅・ベテラン社員をいじります。
まずは会場からのお悩み。「お客様にお店に来ていただくために、新しい切り口の企画を考えたい」「お客様の目を引く工夫をしたい」「興味を持っていただきたいのにアイデアが浮かばない」
これに対してかまいたちさんは、僕らと似てますね、と。芸人の間では高評価だったものの、どうやったら実力相応の評価を世間から得られるか、ずっと考えていたそうです。根底が面白いからできるという前提で、どうやったらストロングスタイルで売れるか、一歩抜け出せるかという問いです。
かまいたちさんは「攻める=入り方を変えることで、人の心をつかめ」と伝えます。無茶なことやったらいいというのではなく、そして攻めは誰にでもできることではない。2018年4月に14年間活動していた大阪から引っ越し、レギュラー8本のうち7本やめて東京進出、これはかまいたちさんの「大攻め」。
一番最初はデビュー3年で、山内さん(小柄な方)の銅鑼を持った中国人キャラのオファーが増えた時。このタイミングではまだネタのストックもなく、トークもできない、その状態でいろいろな番組を回れるか、と問うた時にノーだった。そこで攻められる基礎力がつくのを待った。今はやっと、攻められる力があるとのことです。
「基礎の頂点にいるのがわれわれだと思っていただきたい」このドヤ顔で笑いが生まれる芸風、いいですね。
ニトリさんは、渋谷や銀座のど真ん中に出店している、それはすでに攻めているということです。しかしそれをかまいたちさんたちは知らなかった、知られていなければ攻められていないということになり、もったいないです。攻めているのを知ってもらうには、どうしたらいい?これが次の問いです。
大振りすれば幅が広がる!
同じ仕事をしている芸人がたくさんいる中で目立つために、ホームランを打ちに行ったかまいたちさん。自分たちは、情報番組の街なかのロケで「急に海に飛び込む」ことをしたら、現場では寒い空気になっても、なぜかスタジオで受けた。それを機に、このコンビ、何かやってくれそうという期待が増えたそうです。チャレンジしてくれる、次あいつら呼んだらまた何かやってくれるかな、と思ってくれる人が増え、今まで届かなかった人たちに届く体験を積み重ねているそうです。
デコホームというニトリさんの新しいインテリア雑貨の取り組み、これももう少し画期的に、「もっとデコ出さな」と。
店員さんが全員おでこ出しているとか、これは空振りだけどバズると思うんですよ、と。一人だけおでこを出している人を置いて「この店舗のデコホームを探せ」、それを仕掛けて空振っても全く問題ないじゃないですか、と。お金もかからないし。空振りしても、それが宣伝になったりするんじゃないかと。たしかに、リスクの少ないことは試す価値がありますね。
専門家もこう話します。「やってみなきゃわからない」戦略。物がありふれている世の中には、あったらいいなというもので売る発想に切り替える。お料理や温泉の質で売っていた温泉街を、若旦那をフックにして売った、「若旦那図鑑」まで作った。温泉に誰も若旦那を見に行こうと思っていく人は、これまで誰もいなかったので、これが大ヒット。「作りたいものを大振りして企画に乗せてしまうた方が、新しいものが生まれる時代」との解説です。基礎力があるならば、ホームランを打てる、ということです。
組み合わせて爪あとを残せ!
たくさんの芸人がネタを披露する中では、また同じ漫才が始まった、と思われるとネタに集中してもらえない世界なのだそうです。怖い話にはおかしなことが多いが、それを話しても新鮮味がない。そこで、「怖い話を聞いたらイラっとする」に変えたのだそうです。「なんで?どういうこと?」と前かがみになる。入り方を変えるだけで、聞き手の心にアラートが立つようになるのです。聞き手のエンジンもかかるし、フックも強くなる、そんな効果があると言います。
ここでニトリさんのパンフレットです。コーディネートBOOK、素晴らしいですが、ちがいが今一つよく分からない。濱家さん(背の高い方)曰く、「ナチュラルとフェミニンのちがいが僕にはわからない。ジャパニーズモダンも、ピンとこない人も多いのではないか」と。
「僕なら、例えば『和風の旅館で6万円くらいしそうな部屋』とか。の方がピンとくるし、身近なのでは」と伝えます。社員の方からのアイデアも、「トイストーリー丸出しの部屋」「テレビを見るのに快適な部屋」のように続き、ピンポイントでタイトルをつけてみるのもありだと分かります。
専門家も「裏切りクエスチョン力」、つまり予定調和を裏切ることで、人の興味を引く方法があることを指摘。アイスクリームは甘い、という先入観を裏切って、ガリガリ君のコーンポタージュ味が売れた。これは「アイスなのにコーンポタージュ、甘いの、しょっぱいの、何なに?」と相手に疑問がどんどん湧いてくる状態を作っているのだそうです。それが食べたくなる、買いたくなる、と受け手の次の行動を促しやすくなります。
人のふり見て“ない”とこ探せ
「去年のアレンジから脱却したい」というお悩みもありました。行き詰まったときにh、周りを見渡すのが大切。同業他社を見て、こういう感じで振ったらこんなボケ出てくる、と観察したうえで、パクるのではなく軸を見て、自分たち流にアレンジする、ということは大切だそうです。
人の悪いところはよく見える傾向にあるので、もっとこうしたらよいのに、という箇所を研究して、自社に取り入れることで、より高いものを提供できそうです。
お店で実践してみよう!
後半はワークショップです。店舗で、各お部屋にコンセプトを持たせています。「海」というテーマを持つお部屋があり、これをより目立たせるためのテーマ付の工夫をします
「日焼けしたくなる家」とアイデアを出した社員さん。いいですね。室内でカーテンもあって、ベッドの上に寝そべるイメージなのに、日焼け?何なに?と興味をそそられます。山内さん、「ガングロ男の隠れ家だ」をサブタイトルにプレゼントされました。
他にも、「隠れニトリキャラクターを探せ」。これは、子どもなどにお部屋に入ってもらい、ステッカーを散りばめて、スタンプラリー的に探してもらうなどで、インテリアに興味のない人も巻き込んでしまう作戦。実践力が素晴らしいですね。
ニトリさんは十二分に実力がある会社です。だからと言って落ち着いていられるわけではない時代において、次の一手へのヒントがたくさん提供された回でした。