『人生フルーツ』と葉っぱのフレディと雑木林

ほとんど前情報なしに、ある人の勧めで観に行った映画上映会。樹木希林さんがナレーションする、老夫婦の物語だと耳にしていた『人生フルーツ』です。

東海テレビのドキュメンタリーシリーズの一本とのことで、それもあってか、地元愛知県をフィーチャーしています。

佐々木芽生監督がアートコレクションの収集を続けた夫婦を追った『ハーブ&ドロシー』(日本公開2008)をうっすら連想しながら、観ました。

『人生フルーツ』は、愛知県在住の建築家、 津端修一さんと、妻の英子さんが主人公。高度成長期に集合団地の開発を手がけるなかで、身近に緑のある暮らしのデザインは却下されました。そこで時代に逆行するかのように、土地付きの一軒家で、自らが理想とする暮らしを実践する様子が淡々と綴られます。風の通り道に雑木林があり、自然に涼しくなる。畑で取れたものを食卓でいただく。今で言う「スローライフ」ですが、考えてみれば高度成長期以前は日本も、電子レンジもコンビニもペットボトルもない暮らしでした。

一つ、作品の中で修一さん(夫)が、ヨーグルトは必ず木製スプーンで食べるというシーンが出てきます。口当たりがいいからでしょうか。以前聞いた、似た話が思い浮かびました。ポテトチップスは袋から出してお皿に移して食べなさい、と。直接だと微量のアルミを一緒に食べていることになるのだそうです。袋を輸送のためのものと考えれば、やはり袋からではなく皿に出して食べたいものです。

上映後、このご夫妻に関しては本も出ていたことを知りました。

この映画で繰り返し言われるフレーズがこちらです。ウェブサイトにも出ているので、引用します。

風が吹けば、枯葉が落ちる。

枯葉が落ちれば、土が肥える。

土が肥えれば、果実が実る。

こつこつ、ゆっくり。

人生、フルーツ。

http://life-is-fruity.com/about/

自然の恩恵を受ける時、枯れ葉はゴミではなく肥料になるわけで、無駄なところは一つもありません。葉っぱのフレディーでも同じように、自然の大きな循環について話していますね。

これまで雑木林に大して関心もなかったのですが、今回はとても面白いと感じました。例えるならビュッフェで大皿に色々と盛るように、一定の区画にさまざまな木が茂っているわけです。隣の木に同じものはなく、 ミックスというかハイブリッドな環境で強く育っている。鳥が種を運んだりして、また次の木が生えてくることもある。とても自由な場所です。

私も小学校の裏山など、いわゆる雑木林を探検していた思い出がありますが、松ぼっくりやドングリを拾ったり、いちょうの葉を拾ったり、タンポポの花を摘んだりと、林は豊かですね。同じ裏山でどくだみを摘んで干して持ってきてくれた方もいました。

雑木林の「雑」という字がなんだか損している感じなのですが、単一にスギの木だらけ、松の木だらけというよりは、このように多種多様な植物が生息していた方が、楽しいですし、今の時代にもフィットしているように思います。

私のブログは雑記帳なのですが、これも「雑」に豊かさがある!と言い張りたいです。

上映会は、原宿のペリーハウス。閑静な住宅地にある施設で、1階に3つの店舗、2階にキッチン付きの多目的スペースがあります。この原宿もかつては豊かな畑が広がっていたと聞きました。原という字がついていますし。

上映会の主催者が振る舞った焼き菓子には、長い年月洋酒に浸かったフルーツと、フレッシュフルーツの組み合わせ。新しいものと古いもののコラボ、これも作り手の思いに雑木林的な発想を感じます。

「こつこつ、ゆっくり。」ではないスピードで物事が展開する今だからこそ、ゆっくりほっこり時間も大切にしたいものです。どちらも楽しめるのが、今に生きる人の特権かと。

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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