水がポイント!『ベイビー・ブローカー』(2022)
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
是枝裕和監督の新作『ベイビー・ブローカー』(2022)を観てきました。カトリーヌ・ドヌーヴが出演した『真実』(2019)を観られず、私にとっては『万引き家族』(2018)以来の作品拝見となります。
主演ソン・ガンホさんに関しては、当ブログでも『パラサイト』でレビューしておりました。相変わらずいい役者さんです。
『ベイビー・ブローカー』へのひと言
鑑賞後、こんな印象です。
水に注目... 雨、海、そして洗車!
あらすじに踏み込まずに私が一番推したいのは、洗車のシーンでした。
『万引き家族』で登場人物たちが海に出かけるシーンと重なったのですが、こちらはより人工的です。そう、水の持つ力は、命も彷彿させるし、浄化もあれば、一体化もある。何と(誰と)つながりたいか、何を洗い流したいか、そんな心中をまさに視覚的に示したシーンでした。
家族みたいなもの
これも『誰も知らない』『万引き家族』の系譜を辿るのですが、今回登場するのは家族みたいなもの、まさに疑似家族ですね。
貧困、社会の底辺や闇、と言ったキーワードもあるのでしょうけれども、社会への痛烈な批判というよりは、公私の「私」の部分を扱った作品でした。
登場人物が移動することにより、いわばロードムービーの要素もありますが、車って外から鉄板を一枚隔てたプライベート空間。狭い車の中にいる人間はとても近しい関係になりますね。それで洗車のシーンが生きてきます。
完成度の高い脚本
是枝監督は「お涙頂戴」的なメロドラマは絶対に作らない方です。ベイビーブローカーの話と聞いたところで、赤ちゃんが捨てられて売り買いされてかわいそう、気の毒、という安直な印象を残すものでないことは、想像がつきました。
実際に鑑賞して、伏線の張り方がさすが。ヒューマンドラマにサスペンスクライムがぶっ込まれます。
クライマックスもある。え、というあっけなさもある。2本分の映画を1本にしたかのような濃さが、ハイレベルでした。
一つ知りたいなと思ったのは、演技指導と編集です。全編韓国語(朝鮮語)なので、監督として感情移入の部分をダイレクトに知ることはできません。そして編集も、言葉が分からないと技術的に編集できても、情感的にご自分でのチェックが難しいように思います。
前作『真実』でも外国人キャストの活用はされていますが、ますます国際派となる是枝監督の新境地を、興味深く拝見しました!
追伸で、Aimee Mannを聴いた世代です!