主人公の変容が見どころ、『コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

私が観る映画を決める理由は、(1) 好きな監督だから、(2) 好きな俳優だから、 (3) 人から勧められたから、のどれかです。今回は、人から勧められ、観に行こうと決めました。

『コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話』(2022)、なんでもシガニー・ウィーバーが出ているとか! 1980年代に多く出演された印象が強い(『エイリアン』シリーズ、『ゴーストバスターズ』シリーズ)ですが、久しぶりな気がして調べたところ、コンスタントに1年に1本くらいのペースで出演していたようです。

まず、『コール・ジェーン』の意味ですが、「ジェーンに電話して」です。ジェーンというのが、望まない妊娠をした女性に対して中絶サポートを提供していた団体名で、コードネームのように使われています。

『コール・ジェーン』へのひと言

主人公が、一番のまさか。

本作はエリザベス・バンクス(役名はジョイ)が主演ですが、ブロンドの巻き髪で、いい意味でお気楽主婦を好演しています。夫は弁護士で高収入のため、自分が働く必要はなく、昼間から家の玄関ポーチでお酒を嗜んだり、地域の活動に勤しんだりと、主義主張のムーブメントには無関心。悪気もありませんし、等身大でそういう感じなのです。

その彼女が、この「ジェーン」という組織と接点を持っていくのですが、そこからの変容がこの作品の見どころです。メインビジュアルで、ピンクの固定電話を前に少し憂い顔のジョイからは、想像もできない展開です。

最後行き着いたところには驚きましたが、彼女のコミュニケーション力の高さ、そしてそこからの交渉力で、いわば浮雲のような人生から、自分で舵取りするようにと変わりました。

カッコいい!

このジョイが、悲劇のヒロインなのか、はてまた何なのか。最後まで観ていただくところとなりますが、人が輝くってこういうことか!というのを見せてもらったように思います。

シガニー・ウィーバーの大人カッコよさ健在

シガニー・ウィーバーは、この団体「ジェーン」の代表をしています。とは言え違法行為をしているため、地下組織みたいな存在でしょうか。ピラミッド型組織というよりは、アメーバ型組織のイメージです。

実はシガニー・ウィーバー(1949年生まれ)とスーザン・サランドン(1946年生まれ)を混同してしまったのですが、本作のシガニー・ウィーバーから連想されたのが『テルマ&ルイーズ』でした。『テルマ&ルイーズ』ではルイーズ役のスーザン・サランドンが男性性、「決断する」「前に進む」「強い」キャラクターでした。

『コール・ジェーン』でも、シガニー・ウィーバーの潔さが男前であり、リーダーに相応しい役柄だったと思います。

シガニー・ウィーバーは私の中で社会派のイメージがあったのですが、作品に恵まれた俳優でもあり、前述の『エイリアン』シリーズ、『ゴーストバスターズ』シリーズ、そして『アバター』シリーズでも活躍と、ブロックバスターとのご縁が多いかたです。『ワーキング・ガール』(1988)、『愛は霧のかなたに』(1988)での受賞歴があり、私の印象はその辺りから来た感じがします。そして、アメリカの名門スタンフォード大学とイェール大学で学んでいますから、生まれ持っての聡明さが滲み出ているのかもしれません。

監督フィリス・ナジー

監督のお歳を調べたところ、1962年生まれということで、あぁ!と思いました。

アメリカでも1950年代後半から公民権運動、日本でも1960年頃から学生運動が盛んでした。この時代に、ご本人が直接運動に関わったわけではないとしても、人としての権利を勝ち得ていくプロセスが体に染み込んでいるのだと思います。1970年代生まれには、なかなかこの獲得感は持ち得ない。

また、本作は2022年ベルリン国際映画祭で上映されたとのことですが、その前にサンダンス映画祭でプレミア上映されています。サンダンス映画祭はインディペンデント作品を応援する映画祭ですから、よく計画して上映されたものと思いました。

フィリス・ナジー監督は、映画『キャロル』(2015)の脚本も担当している、映画界のマスタークラスですね。

重くなりがちなテーマなのに、さなぎがチョウになったかのような変化を綴った爽やかな作品でした。

映画公式サイト:https://call-jane.jp/

P.S. 1970年代のフランスで中絶を扱った作品『あのこと』(2021)もご覧ください。

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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