見るほどにオープン、『怪物』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
6月2日に公開された是枝裕和監督の『怪物』を観てきました。脚本は坂元裕二さんです。
では、早速ひと言に参りましょう。
『怪物』へのひと言
あいまいさ100%。
本レビューを書いている時点で、『怪物』のコンセプトに反すると思うのですが、本作は決めつけができないことに溢れています。
この人はこうだ、これはこうだ、と思ったらちがった、の連続。何ひとつ固定しているものがない。解釈が成り立たない。ちょっと『羅生門』みたいな感じもします。
これが作品の世界観でもあり、作家の世界観でもあると思います。そして、往々にして現実はこんな感じではないでしょうか。
よって、『怪物』について語ることすらも無意味なように思える、哲学的な作品でした。そして勧善懲悪ではない世界は、ますます今の世相を表しているとも言えそうですね。掴もうとするほど広がって消えてしまう感じ。
先日、武田双雲さんだったかの表現で、「森羅万象を知ろうとするのが理系、人の心の中を知ろうとするのが文系」という表現もありました。その意味では『怪物』はまさに文系映画、バンザイ!
瑛太と分かっていながら腹が立つ
安藤サクラさんの安定の演技に引き込まれつつ、中盤以降グイグイ来るのが永山瑛太さんですね。あの瑛太さんなのに、すごくイラッとさせられます(褒め言葉)。一つは髪型かも!
高畑充希さんも、いそうな感じがよかったです。
子どもを撮る天才
是枝監督は、初期のドキュメンタリー番組『もう一つの教育〜伊那小学校春組の記録〜』でずっと小学生を撮っていらしたので、子どもを撮る天才だなぁと思っていました。『誰も知らない』でも、子どもたちの演技はとても自然でしたし、今回の『怪物』もしかりです。しかも、伊那小の時と同じ長野県が舞台でしたね。
廃車になったバスで遊ぶ子どものシーンとか、最高です。本当にわくわくするし、何時間でもいられるでしょう。大人になったら、ちょっと躊躇するようなことも、まったく関係なくやってしまう。自分の子どもの頃の記憶も、よみがえってきました。
是枝監督作品に出られた子どもたちは、本当に幸せだと思います。ただ、『誰も知らない』の柳楽優弥さんがこの熱狂を当時受け止めきれなかっただろうことを想像すると、黒川想矢さん、柊木陽太さんには適切なガイド役がついてあげてほしいなと。
「神の目」
映画研究ではお馴染みの「神の目」ですが、本作では多用されています。「神の目」は、あたかもそれを神様の視点で見ていたかのように(今の感覚ならドローン?)撮る方法です。多くの映画ではそれが当然のように用いられていますが、例えば推理映画のように、Aさんから見たCさんはこうだった、Bさんから見たCさんはこうだった、という後に、真実が明かされるならば「神の目」視点、という感じです。
『怪物』もその要素が満載ですので、2回目以降も楽しめそうです。
素敵な作品を、ありがとうございました!
映画公式サイト:https://gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
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