今さら観た青春映画『シング・ストリート』

日本公開当時、私の周囲でも「今年一番の映画」と高評価を聞いていた、アイルランド映画『シング・ストリート 未来へのうた』(日本公開2016年)。

私は思春期を取り上げた作品が大好きで、高い期待値を持って拝見したせいか、そこまでハマれませんでした。

この作品、どんな人にお勧めでしょうか。

80年代を感じたい人

モテたいからバンドを始める」は、よく聞く話です。スマホもLINEもないので、女の子には話しかけるしかない時代です。この作品には、この2つの要素が背景にあります。

テレビでは、a-haデュラン・デュランが全盛期。男性が化粧をする走りもありました。バンドでそのビジュアルを真似する男の子たちは、同級生から「おかま」「ホモ」などとからかわれます。主役のフェルディア・ウォルシュ‐ピーロは、ポール・マッカートニーのようにめじりの下がった可愛らしい顔で、髪やメークがちょいちょい変わる高校生、バンドではボーカル役を演じています。

そこには憧れの「マドンナ」役が必要ですね。当時の女の子像は今見ると若干違和感を覚えます。きれいだが高嶺の花、男の子の誘いは鼻でかわす、強い意思を持っていても女性として自立しているわけではなく、お金やコネのある男にくっついていく、そんな少女がヒロインです。 強めのカーリーヘアと濃い目のリップも、80年代独特ですね。

この女の子、存在感があるなと思ったら『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディの元彼女&親友を演じたルーシー・ボイントンでした。気づくのが遅い私。

自分の青春と照らし合わせたい人

誰でも赤面するような過去はありますね。歯を強制している、眼鏡をかけている、小柄である、車を持っていない…。正直、男の子たちアグリです。大体十代では女の子の方がマセていますし、大人っぽく見えますから、男の子は頼りなさや幼さが出ます。

モテたいから楽器を習う、コピーバンドを作る、作詞作曲する、青空の下でミュージックビデオまで作る。学校の校則に反発する、ケンカの強い奴に殴られる、それもすべて青春。

Photo by Stas Knop from Pexels

アメリカ映画のように、高校のプロムシーンもあります。自校の生徒たちの前で歌いますが、バラードを歌うとノリノリだった人が引いてダンスフロアが空っぽになってしまうなど、高校生あるあるのシーンまでよく設定されています。

アイルランドの歴史を感じたい人

アイルランドは、1970年代の工業化と1990年代以降のハイテク化のはざまに、経済停滞を経験しました(出典)。本作品は全編ダブリンロケで、監督の少年期を再現したとも言われています。不況のダブリンは曇り空、そして両親の不仲やアル中の問題、海を越えたロンドンへの憧れ。お金も人生経験もない十代には、背負いきれないものばかり。

作品タイトルの『シング・ストリート』はバンド名で、同じ発音のSynge Street (シング・ストリート)にある学校を文字ったものです。

Google Earthでは、シンジ・ストリートと出てきますが、「クリスチャン・ブラザーズ・セカンダリースクール」と確認できました。実在の学校だと思うと、リアリティが湧きますね。

予告編でビビッときた方

本作品の予告編は、本編と順序などちがうものの、よく出来ているので、予告編を観ていいなと思ったら本編を観ることをお勧めします。

たぶん40代以上の男性の共感を得やすいかな、と。Amazonプライムの無料コンテンツにも入っています。

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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