ニコラス・ケイジが引きのカメラで演技『PIG/ピッグ』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

今日の映画は『PIG/ピッグ』(2021)です。Twitterの話題につられ、つい来てしまいました。

サービスデーで、午後の回に8割の席が埋まっていました。

『PIG/ピッグ』へのひと言

早速、ひと言です。

ニコラス・ケイジが顔で演技しないのがいい。

かつて、ニコラス・ケイジは顔で演技していました。そう、眉毛ハの字で悲しい顔をする感じです。

https://tenor.com/

今回は彼と分からないような風貌ですからね、、全体的に灰色だし。伸びっぱなしの長髪顎を覆うひげ。途中、顔面血だらけになったりもする。

目力があるかというと、今回はそんなにないです。それでも、ニコラス・ケイジと分かっているから、丸ごとめでて観ていられる感じ。

これがトム・クルーズやブラッド・ピットでは成立しないことを思えば、よくやりました、ニック!

顔での演技を卒業して、存在感で示したところは、すごかった。(ただ、静かな画面ゆえに意識が飛んでしまった瞬間もありました。ゴメンナサイ。)

ジャンルが分かりづらい

本作、私はコメディかなと思って観に行ったんです。だって、ニコラス・ケイジが豚をこよなく愛すと言うんですから。

『ベイブ』(1995)のことも思い出しました。

次の可能性としては、ニックがあの風貌なので、サイコスリラーですよね。ポスターも暗いですし、クレイジーにウワハハハハッと高笑いする、ストーリーがあまりない感じの作品。

宣伝文句としてはリベンジスリラーとあり、たしかに「俺のブタを返せ」のごとく、執念で追うモードにはなっています。

でもね、見進めるとそうじゃない。他にはどのジャンルが残っているでしょう?ラブロマンス?アドベンチャー?ホラー?

そうだなぁ、私にはヒューマンドラマに見えました。ニックの得意なジャンルです。もう少し言うと、女性が出てこない作品なのですが、男性たちが強さを誇示する中で、ニックの弱さが染み入ります。

豚の深読み

今回の舞台は米国オレゴン州なので、豚は食用の扱いですね。『PIG/ピッグ』は章立てになっていて、それぞれの章に料理の名前がついていたりするので、豚への愛とどう結びついているのか、少し矛盾を感じたりもします。

ニックの豚はペットではなく、養豚でもなく、トリュフ探し用。とりわけ大事なお仕事道具でしょうか。トリュフを現金に変えているわけなので、山里はなれた所に住んでいても資本主義の匂いはします。

豚は、貯金箱(piggy bank)でも使われているくらい、富やお金の象徴でもありますしね。

豚は、イスラム教やユダヤ教では禁忌の食べ物です。今回の準主役、トリュフの取引をしている男性(アレックス・ウルフ演じる)は、役名アミールと言って、アラビア系の名前(Amir)です。背景的に豚を食べない可能性もありますが、ヨーロッパ系の名前ではないことも、また時代の流れだなと思いました。

いくつかのレビュー記事では、この映画とキリスト教の関連について言及しています(Roger Ebert, Think Christian)。例えば、「富める者は貧しい者から奪ってはならない」「右の頬を殴られたら左の頬を差し出せ」そういう教えがありますよね。いくつかのエピソードは、そのようにキリスト教的な価値観とともに解釈できると思います。そうすると本作はますますリベンジスリラーではないと言うことで、期待して見に行った人が肩透かしをくらう、というのが本当のオチなのかもしれません。

今後のマイケル・サルノスキ監督の作品にも期待です!

公式サイト:https://pig-movie.jp/

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Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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