ミックスジャンルの大作、『バビロン』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督で、ブラッド・ピット主演なら、もう行くでしょう、という『バビロン』。予告もキラキラしていて、金ピカなので、マフィアの話なのかと思いました。しかも3時間という、気軽には観に行けない長さです。

アメリカでは2022年12月、日本では2023年2月10日に封切られ、私はその翌週観ることができました。

『バビロン』へのひと言

ジャンルがかなり難しく、複合的。

本作品の主演、日本ではブラッド・ピット、マーゴット・ロビーとされています。でも、ブラッド・ピット扮するプロデューサーのアシスタントを演じたディエゴ・カルバが、実は主役。カルバはゴールデングローブ賞(最優秀主演男優賞)にノミネートされているようです。

https://www.imdb.com/name/nm3886586/

カルバ自身もメキシコ出身ですが、彼の演じるマニーも、メキシコから家族で国境を越えた移民。英語も少し訛りがありますが、ここはハリウッド。人の嫌がる仕事をし、上に気に入られれば、のし上がっていきます。

若き頃のアントニオ・バンデラス(彼はスペインですが)を思い出しました。素朴で、自然体のよさがあります。30歳だそうですから、新しいスターが生まれた感じ、今後の活躍が楽しみです。

そう、この使用人のようなマニーが、売れない女優であるネリー(マーゴット・ロビー)に静かな恋心を抱く、これが作品の軸にあります。私はラブ・ストーリーとして出すのが一番美しいなと思ったのですが、この映画はそれだけではありません。実際、検索すると、歴史、ドラマ、コメディなども出てくるくらいです。

ハリウッドの映画産業の歴史を綴っているので、サイレントからトーキー、モノクロからカラーへ、という時代変遷も扱っています。アジア系演者の活躍も描けば、アフリカ系のトランペット奏者の苦悩も描く。ブラッド・ピット演じるジャックという大物プロデューサーの人気絶頂期も衰退期も出てきます。トビー・マグワイアがギャングの大ボスを演じ、このギャングに追いかけられ命が危ういシーンもある。とにかく忙しいのです。

群像劇といえばそれまでですが、この盛りだくさん感が作品を中途半端にしてしまった気がしていて、勿体ないと言うか。ドラマでありながら、観終わってどういう気持ちになる、というところはかなりオープンだったんじゃないかと思います。

低俗さとの戦い

映画は低俗なものでした。見世物小屋と同じ扱いでした。オペラを観るような人からは見下されていました。

ですから映画は「一般の」娯楽になるまで何十年と経てきたわけですが、ザ・低俗を演じ切ったのがマーゴット・ロビーです。頑張りました。

本来気品のある俳優さんなのに、最初から最後まで、本当に品がないです。そして、悪い癖も変わらないので、上流の暮らしは装えません。刹那的に生きています。その低俗さが魅力でもあるというのは、映画そのものにも重なります。庶民が日々の労働を忘れ、一瞬の息抜きのために見るのが映画。

欲を言えば、駆け出しのネリーの歯並びが悪いなどの演出があると、もっとリアルだったかもしれません!

どの時代に生きるか

人間は生まれる時代を選べません。

たかだか100年前、映画は「現実から夢に逃避する」娯楽でした。音を入れる技術がなく、会話は文字スライドを挟んでいました。トーキーになった時、声が人気の妨げになる俳優もいました。

映画制作は危険な現場でした。セットを組めば燃えてしまい、撮影時に死者が出るくらいで、エキストラにも十分なケアがされていませんでした。プロデューサーは派手なパーティを繰り返し、メディアに叩かれました。映画スターは雲の上の存在で、一目見たさに賄賂が横行しました。

今の時代も映画は娯楽として楽しまれていますし、映画業界を志す人もいます。ただ、映画が大衆にどう言う意味を持つか、映画制作は他と比べてどのような職場なのか、を考えると、ずいぶん様変わりしたでしょう。映画に対して競合の娯楽も多く、労働環境も特別いいわけではありません。

私も含め、映画が好き、映画に愛を注ぐ関係者はたくさんいます。どの時代に生まれ、映画史のどの部分と関わったのかが、その人の映画人生を左右する。まだ動いている業界だな、と思います。そんな歴史を、ブラピは半生を振り返って、プロデュースしたかったのかな、というのが概ね一致した見解でしょうか。

3時間は長かった

覚悟はしていましたが、189分のうち4割くらいが、どんちゃん騒ぎです。ずーっと大音量で、乱舞しております。その雰囲気を感じ取るには十分な演出でしたが、せめてこの映画は130分くらいに短縮できたのではと思います。

先述のジャンルと関係しているかは分かりませんが、観る人が何を期待したらいいのかが分かりづらい映画のため、レビューの評価は低めですね。星5つのうち、3点台が続いています。

映画公式サイト:https://babylon-movie.jp/

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Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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