もともと映画はリモート撮影でも作れたりする

もともと映画はリモート撮影でも作れたりする

5月1日、『カメラを止めるな!リモート大作戦!』が公開されました。#リモ止めだそうですが、話題作りがずば抜けて上手いですね。NHKも#テレワークドラマとして、『今だから、新作ドラマ作ってみました』を制作中です。

#リモ止めは30分近い短編作品なので、今週末じっくり見ることにして、今日書きたかったことは、映画はもともとリモートでも撮れるということです。

180度ルール

主としてハリウッド映画には、「180度ルール」とう文法のようなものがあるというのを、聞いたことがあるでしょうか。2人の登場人物がいた場合、その2人を結んだ線のどちらか片側からしかカメラは撮れないというルールです。

これによって、Aという人物が視線を右に、Bという人物が視線を左に送るショットを組み合わせると、会話しているようなシーンになるのです。例としてauのCMを使わせていただきます。(動画引用元:三太郎シリーズ鬼ちゃん出演CMまとめ2 鬼の親子篇~鬼ちゃんの親心篇 2018

鬼が小鬼に語りかけるシーンです。

小鬼が画面右を見るショットと、鬼が画面左を見るショットを組み合わせると、会話しているようになります。今回は相手方が部分的にフレームインしていますが、ハリウッド映画など大物俳優同士の撮影予定が合わなくても、姿が似た人を置くことで、人物Bの代役の肩越しに人物Aの撮影を進めることがあります。

この180度ルールを日本映画は破っているとして、特に小津安二郎監督などは独特のカット構成が注目されました。小津監督はむしろ次のPOVショットに近い形で、二人の会話を作っていきますので、興味がある方は作品を見てみてください。

POVショット

もう一つ、POVショット(point of view=視点)というルールがあります。これは、登場人物の見た視線の先を、次のショットで写すということです。同じCMから事例を出すと、小鬼が後ろから視線を感じて振り返った先に、鬼ちゃんが見つかってしまったことを驚くシーン。

こちらもよく分かるように、ショットを構成しているのは1人ずつです。よって、1人ずつ撮影したものを組み合わせれば、シーンを構成できるようになります。

これら2つが、映画を見る時の「文法」とは誰も意識せず見ているわけですが、画面に写っているのが1人であっても、それをつなぎ合わせると場面が成立することは、お分かりいただけたのではないかと思います。あとはお金をかけて合成するなど、いろいろ方法はありますが、リモート撮影と映画はある意味近しい関係にあったということを、お伝えしたいです。

(おまけ)「gaze」という考え方

映画学(フィルム・スタディーズ)ではよくgaze(ゲーズ)という言葉が使われます。見る行為を指すのですが、カメラが写すものが観客の見るものであり、カメラは誰の視点でこの物語を見ているのか?私たちはどの立場でこの物語を体験しているのか?という問いがあります。

空撮していれば「鳥の目」かもしれません。180度ルールで展開するシーンでは、その場に立ち会っているかのような「オブザーバーの目」、POVショットでは、観客は「主人公の目」になり切っていることがあります。このようにコロコロ変わるため、万能の「神の目」(omnipotent gaze)とも言われます。

漫画もそうなのですが、カット割り、コマ割りで構成されている芸術は、どの視点で書かれているかや、視点を共有することによって生み出す効果を見ていくのも、興味深いです。同時に、観客である自分の目とあまりにも自然に同化してしまうため、無意識のバイアスがかかっていないか、特定の思想の刷り込みに使われていないか、など注意が必要と言われています。