アメリカ社会をシニカルに描写『ホワイト・ノイズ』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

12月にも複数の映画を劇場で観ることができましたが、2022年最後は、『ホワイト・ノイズ』(2022)をお届けします。前情報ゼロで行きました。ノア・バームバック監督です。

Netflixでは2022年12月30日から配信されるため、こちらでチェックしようと思う方も多いでしょう。私はNetflix契約していないので、劇場へ観に行きましたが、同じように早く観たい!と足を運んだ方も多かったようです。

では早速、ひと言に移ります。

『ホワイト・ノイズ』へのひと言

アメリカ社会、アメリカの家族の描写。

冒頭は古い時代の映像で始まり、一瞬社会派の作品なのかと想像します。すると映画は日常を描きながら「化学物質の流出事故」そして夫婦間の関係においても非日常が起こり、展開していきます。

大学都市、大学の演劇がかった授業、エルヴィス・プレスリー、学生のさまざまな人種。子ども4人の家族。子どもの数が多い家庭と聞くと、熱心なキリスト教信者、ヒスパニック系、離婚経験者同士などを連想することが多いです。

人災、安全管理意識、交通渋滞(車社会)、モーテル、大量消費。

アダム・ドライバーの妻を演じるのがグレタ・ガーウィグ(ノア・バームバック監督のパートナー)ですが、彼女のカーリーヘアがまさに「フラッシュダンス」級です。

ドン・チードルも素晴らしいです。『オーシャンズ11』『アイアンマン』『アベンジャーズ』などシリーズ大作にも出つつ、インディー系の良作にも出ていますね。『クラッシュ』もそうでした!

欧米のレビューサイトでは、原作との比較や、パンデミックについての話が多かったです。原作者ドン・デリーロ氏が1985年に発表した小説ですから、そちらを読んでみたくなります。またデリーロ氏の発表した小説の数々からすると、アメリカ社会を描いていらした方だということも分かります。

アメリカに住んだことのある私からしても、アメリカが「そこにある」感じを強く受ける作品でした。

難しいジャンル分け

本作品はコメディに分類されていて、全部観てやっとその意味が分かります。単純なお笑いではなく、皮肉をこめた笑い、風刺、失笑という感じ。

ただ、どこかで観たことのある作品に近いかな、とも考えたところ、レオス・カラックス監督の『アネット』が出てきました。

アダム・ドライバーが主人公であること。作品が章立てになっていること。詩の朗読など、劇仕立てのシーン、ミュージカルのようなシーンもあること。

もう一つは、『アイス・ストーム』(1997)でしょうか。『アイス・ストーム』の方がやや家族描写に寄っていますが、家族が奏でる不協和音、家族が機能しているかのような幻想感は半端ないです。

ホワイトノイズの意味

ホワイトノイズ… 一般用語としては、以下の説明がありました。

ノイズ(雑音)の一種で、様々な周波数の音を同じ強さでミックスして再生したノイズ

https://www.audio-technica.co.jp/always-listening/articles/white-noise/

原作未読のため、作品でのホワイトノイズの意味を明確に把握できていませんが、ポスターにあったテキストがヒントかもしれません。”You can’t hear it if it’s everywhere.” (もしその雑音に囲まれていたら、聞こえない。)「様々な周波数の音を同じ強さでミックス」した雑音は、自然界にはないはずで、合成的に作られたものです。テレビの「ザーッ」という砂嵐もホワイトノイズに例えられます。そんな不自然な音に象徴される空気感、違和感を、ホワイトノイズとして表現したのか、と想像しています。「なんかおかしい」と思うことができないほど、「なんかおかしい」に浸かっている感じ。

アダム・ドライバーの新作、くらいな気持ちで足を運びましたが、35年前に書かれた小説を元にした、いわゆる尖っていないアメリカを考えさせられる、貴重な作品でした!私が想像するに、東部でも西部でもない、大統領選挙で言えば共和党支持層のアメリカが、ここにあるのでしょう。

Varietyによれば、今年の一本としてウェス・アンダーソン監督が選んだのが、この『ホワイト・ノイズ』(出典)。たしかに、通好みではある。私は、時間があるときにもう一度、じっくり観てみたいです。

公式サイト:https://www.whitenoise-jp.com/

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Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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