偶然が現場でも起きているほっこりさ、『偶然と想像』
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こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!11月、12月はエネルギーチャージのため、週2回(月・木)の更新とさせて下さい。
濱口竜介監督の『偶然と想像』(2021)を、東京フィルメックスのオープニング作品として見ることができました。12月17日、Bunkamuraル・シネマでの公開が控えているようです。
濱口監督はあらゆる古典作品を見ている film buff(映画マニア)でもあるので、映画的な手法について語りたい人には話が尽きません。でも、そういう難しそうな話は抜きにして、初めて見た人がいいなと思える、とっつきやすい作品だなぁ、と思ったのが『偶然と想像』です。
『偶然と想像』へのひと言
人間がやさしいから、日常が愛おしくなる。
濱口監督作品は「本読み」という演技スタイルが注目されていますが、この作品の楽しさは、そこよりも、脚本なんだと思います。
今回の3本は、三角関係にある男女、教授と学生、女性2人がそれぞれ主人公なのですが、劇映画で取り上げたいような、もしくはニュースで取り上げられるような、ドラマティックな話は起こりません。
そのような極端さはなくても、「これ起こりうるな」というリアリティと、そこにハマってしまった(当事者になってしまった)人の悲しみや怒りを、見ている人は感じます。そして、失礼ながら笑ってしまうこともあります。
そのくらい、現実は可笑しいものだということ。
「誰かの人生を変えるつもりで喫茶店に行く」
濱口監督は、ご自宅か喫茶店で脚本を書いておられるそうで、喫茶店では当然隣の席の人の会話がヒントになってくるよう。ネタの宝庫ですね。聖人でも君子でもない私たちが織りなす日常が、いかに滑稽か、しかし当事者がいかに大真面目か、というのが、他人のことだとよく見えるのです。
監督は、喫茶店を「人生が渦巻いている場所」として、「自分も誰かの人生を変えるつもりで、喫茶店に行く」と発言。会場の笑いを誘いました。
登場人物の発する言葉の中には、嫌味もトゲもあれば、やさしさからのウソもあります。それが全部、愛おしいなと感じる。
そして、これを監督も撮影も俳優も、「足す」ことなくフラットに撮っている。セリフを役者に入れた上で、現場で違和感があれば変えている。それゆえ、日常に近い物語として見ることができた、そんなふうに思います。
短編に改めて注目する理由
劇映画の2時間という長さに慣れてしまうと、本作品は3つの作品で121分。短編は物語を展開する上でやや物足りない気もするのですが、なぜこの長さに?
濱口監督は、短編がどれだけ大事か、短編独特のリズムというのを、エリック・ロメール監督作品の編集をするマリー・ステファンさんから学んだそうです。
また、短編は小さなチームで動くことができ、作り方にも自由度が高くなるとのこと。これも、なるほどですね。
今回見た3本は、7本のまとまりのうちの3本とのこと。また見られることが何よりの楽しみです。
クラッシックの『偶然と想像』の、芸術として完成されたほのぼのさが、好きだ!