不機嫌なティム・ロビンス必見!『ザ・プレイヤー』(1992)
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
人は誰でも、青春ソングの一つや二つ、ありますね。それと同じで、青春期に見た映画は、どうしてもカムバックしてしまうもの。私にとっては1990年代がそれに当たり、ちょうどミニシアターブームと重なります。
そんな懐かしのロバート・アルトマン監督作品『ザ・プレイヤー』(1992)、私はアメリカの授業の中で見ました。鑑賞後、教授の最初の投げかけが、「何人のスターが分かった?」もちろん、当時もシェールやウーピー・ゴールドバーグ、アンディ・マクダウェルなど分かりました。登場したスターは65名と言われています。そんな映画ある?
『ザ・プレイヤー』へのひと言
私にとっては、これ。
不機嫌なティム・ロビンスに、魅了される。
1990年台のヒット作の一つが『ショーシャンクの空に』(1994)で、あまりにもこの印象が強く、刑事コロンボのピーター・フォークのように、ティム・ロビンスの「いい人」キャラが定着してしまったのではないかと思います。おでこの広さも手伝って、聡明キャラというか。
一方で、『ザ・プレイヤー』のティム・ロビンス(主役のグリフィン)は、「イヤな奴」メーター振り切れてます。嫉妬心に燃え、嘘つき、他人に無関心、女性にだらしがない… ジコチューのかたまりですね。190cmを超える長身に大ぶりのライトカラージャケットを装い、調子よすぎ! ただ出世街道にいるからには、どこか観客の心とも呼応する部分があり、「いい人面(ツラ)」もあるので憎みきれない。
サスペンスの要素も相まり、グリフィンの肩を持ちたくなる気持ちも出てきます。
だからこそ、この役を演じ切っているティム・ロビンスを見てほしいと思います。
アルトマンにしかできない
本当は「アルトマンにしかできない」をひと言にしたかったくらい、すごい映画です。
アルトマンは風刺を得意としていますが、原作を用いつつ、映画界の裏側という、ご自分のホームグランドを暴くという行為。マイケル・ムーア監督のようにインディーズとしてなら分かるのですが、アカデミー賞とも相性のよい監督がこれをするとは。
同時期に『プレタポルテ』も発表したので、やはり「裏側」を撮りたい方なんでしょう。
そして65人のスターをカメオ出演させたことも、誰にも真似できない。もしかして黒澤明監督クラスならできたかもしれませんが、ハリウッド=世界ですから、スケールが違います。
私は、アルトマン監督には「俺が俺が」というエゴを感じず、そのエゴを超えてやはり聡明さとメッセージが際立つ監督。聡明でなければ、風刺はできません。こういった作家性をもちながら、産業とシステムの中でチームで作品を作り出す、映画監督であって、映画作家ではないですね。
ハリウッド映画の歴史も分かる
なぜ『ザ・プレイヤー』を映画のクラスで見ることになったかという理由の一つに、これはハリウッド映画の歴史を扱っているから、というのがあるでしょう。このビジュアル、不吉ですが、何の「死」を扱っているのでしょうか?
業界の裏事情もたくさん出てきますが、映画の旧作から新作、外国映画まで、小ネタ満載です。作品の上映もあれば、ポスターやポストカード、人物の会話に、出てくる出てくる。この時代、見直せるのがいいですが、見直すのが難しい1992年にここまで細部にこだわった所にも、小説とのちがいを含めて作品の価値があるでしょう。
プレイヤーとは
Macmillan英英辞典では、player には5つの意味がありました。
- (スポーツや競技の)選手
- (音楽)演者
- 企業や政治への影響力を持つ人物、組織
- (古い言い方)俳優
- 多くの女性と遊びの関係にあり、結婚や長期コミットをしたがらない男性
タイトルは「The Player」ですので、特定の人物を指しているのですが、グリフィンと考えるのが普通でしょうか。5のいわゆるプレイボーイでもありますが、3の重要人物、という感じ。4の俳優に、作品全体をかけているかもしれませんしね。
よって、主人公のティム・ロビンスにフォーカスしても、ハリウッド裏事情を知る意味でも、小ネタに着目しても楽しめ、何重においしい映画なのでした。
(おまけ)不機嫌ティム・ロビンスを見るなら、ほぼ同率で『ショート・カッツ』(1993)もオススメ。こちらもロバート・アルトマン監督作品で、群像劇(さまざまな登場人物による物語)のためティム・ロビンス度は薄めですが、めちゃくちゃ不機嫌です!
『ザ・プレイヤー』(Amazon Prime)