熱烈なファンを作ったタランティーノのデビュー作『レザボア・ドッグス』(1992)
マドンナが「ライク・ア・ヴァージン」を歌っていたころ、本当に可愛かったです! そう、この歌の話から始まる、私の好きな1990年代の作品。
こんにちは、映画ひと言ライターのJunkoです!
今日は、クエンティン・タランティーノ監督のデビュー作『レザボア・ドッグス』です。先日『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』を書いてから、どうしてもサンダンス作品が観たくなりまして。
監督は1963年生まれ、当時30歳手前だったということですね。では早速、ひと言に行ってみましょう。
『レザボア・ドッグス』へのひと言
こちら、インディーズ系映画の代表作で、かつカルト的ヒットと言われています。今で言うと、駆け出しのインスタグラマーやYouTuberに、「こよなく愛するファン」が付いていくイメージ。ハリウッドの大衆受けとはちがった層にウケる、テレビとSNSのような関係は、この頃の映画にもあったんですね。
ほとんどが倉庫で展開する、まるで演劇のような映画。
作品の大半は倉庫(ウェアハウス)に逃げ込んできたギャング(窃盗集団)のやり取りで、低予算ならではの作りこまない映像が続きます。これ、演劇にしても見られるなー、と。特に黒いスーツの男が数人、銃をかざし合うシーンなどは、影絵(シルエット)のよう、演劇にある静止画のように目に残ります。
低予算でも面白いのが、脚本と俳優の力ということ、大作とも互角に戦えることを示した映画です。
もちろん映画なら表情を見せるクロースアップが取れますから、それにより演劇よりも人物に感情移入できるという効果もありますし、あまりにも暴力的な描写があるので、演劇では生々しすぎるという意見もあるかもしれません。
ちなみに、タランティーノ監督の才能を見込んだハーヴェイ・カイテル氏が、製作にも名を連ねています。
では、この映画の面白さをもう少し深掘りしてみます。
鉄板のサスペンス
古典的に面白いのが「裏切り者」や「犯人」の話。『オリエント急行殺人事件』しかり、『24 -TWENTY FOUR-』しかり、自分たちの誰かが裏切り者だ、という設定が盛り上がりますよね。『レザボア・ドッグス』も、誰もが「誰かに裏切られた」と感じて、もうお互いを信じられなくなり、不協和音が生じます。
裏切り者は、rat(ネズミ、裏切り者、卑怯者)と言っていますね。“We think we got a rat in the house.”
そして、「10年経っても褪せない怪作『インセプション』(2010)」でも書いたのですが、「層」がある、つまり時空と場所が交差した物語が展開するのです。本作の冒頭は、「裏切り者」のせいで計画が失敗したところから始まり、計画のためにメンバーが集められていく話や、計画が発足した時の話が、織り交ぜられていきます。
考えてみたら、サスペンスは「層」を成す基本ですよね。「裏切り者」は「裏切らない者」を演じているわけです。誰がどこまで知っている、いつ真実を知ることになる、オーディエンスが知るタイミング、などの「層」が鑑賞体験を楽しくしてくれます。
綿密なペルソナ設定
もう一つ、役どころの面白さがこの映画の魅力です。見たことない方でも、「ホワイト」「オレンジ」「ゴールド」と、登場人物に色の名前がつけられていることはご存じかもしれません。ミスターをつけるところもカワイイ。色で呼ぶ理由は、犯罪者たちが素性を知られないために、本名や出身地、服役した場所などを隠し、今回の計画の話しかしないことになっているためです。
しかし、それぞれの人物の情の深さ、口ぐせ、こだわり、ジョークの内容、そういうディテールに人間味があふれ、役者さんたちも演じて楽しかったんだろうなと思います。
パム・グリアの下りなど、タランティーノ監督の自伝的要素がセリフに含まれていたりと楽しいのですが、これもセリフの面白さが「お芝居向き」と思ってしまいます。
ティム・ロスがイギリスの俳優ということを考えると、やっぱりイギリスの俳優層は厚いな!
演劇化についてネットで調べたところ、直近でも2019年にテヘランで上演されており、実例はあるようです。原作はスマートフォンがない時代ですから、少し改変は必要かもしれません。
『レザボア・ドッグス』のが好きだ! これを機にブレイクしたタランティーノ街道が大好きだ!