ユーザー視点の旅サイトが勝ち残る!
本、雑誌、ネット、口コミ…。旅のプランニングには、どんなツールを使うでしょうか。
ガイドブックからウェブへ
ふた昔前まで、「地球の歩き方」というガイドブックが王道でした。もちろん今も人気かと思います。英語圏だと「The Lonely Planet」が有名ですね。
今はウェブの時代、TripAdvisorなど旅行者の口コミサイトの方が、一般的な印象があります。 視覚から入り、Instagramで「この景色でポージングしたい!」という方も、一定数います。
私の印象では、 日本人の国内旅行に限って言うと、TripAdvisorやInstagramよりも、情報誌やTwitter が活用されている感覚があります。そして、情報誌の内容はウェブでは見られない、Twitterは情報が点在してしまうことから、地方自治体の観光情報ウェブサイトが、必然的に頼りとなります。
自治体ウェブサイトが超えられない壁
観光に公的な予算が投じられ、信頼ある情報を得られるのはとても有難いことです。
昨夏、五島を旅したときに、ひとつ困ったことがありました。
五島列島の各自治体ウェブサイト情報は充実していたのに、お目当ての行き先が北なのか南なのか、宿泊先の近くなのか、どこにあるのかが全く分からなかったのです。
例えばの話で、東京で浅草寺は台東区にあり、スカイツリーは墨田区にあります。大よそ同じエリアにあるのは、住んでいる人なら感覚的に分かりますが、位置関係が分からないままで、一日のプランを立てづらいのです。
ウェブサイトの限界は、旅行者の都合ではなく、自治体側の都合によるもの。旅行者の視点で見たときに、どのような状態が最適でしょうか。
総合ポータル×恨みっこなしで競う
その疑問をずっと抱えたまま、秋に美濃市観光協会のスゴい事務局長さんのお話を聞く機会があり、2つのヒントをいただきました。
自治体ごとにウェブサイトを作成する状況については、いかんともしがたい、変えられるものではないというのがこの方の見解でした。
そのため、この方は岐阜県のすべての自治体が発信できるFacebookページを立ち上げ、自由に投稿することを、一つの解として提示されました。
岐阜県の観光地まる分かり【Tourist attractions in Gifu Prefecture.】
このページ立ち上げにもいろいろあったようですが、ユーザーが1か所で自由に閲覧、検索することを可能にしました。
もう一つの話はうろ覚えなのですが、和菓子の有名な美濃市で、ある店で和菓子詰め合わせを買うと、別の店のものが一つ混ぜられている、というような仕掛けだったと思います。
これも、例えば老舗Aと老舗Bの商品を一緒に売るなんて普通想像できないけれども、食べる側からしたら、どちらも食べたいなぁ、と。もしくはAを贔屓にしているけれど、Bはどんな味なのかという好奇心、そういう気持ちに応えてくれます。
例えばおまんじゅう屋さんが10あれば、1つの店から1つ、合計10個のまんじゅうを詰め合わせにしても、いいかと思います。
顧客に寄り添う=顧客に聞く
これらのアイデアは、「小さい力を束ねて大きくしよう」という協力の要素と、「その中でユーザーに選ばれるために競うこともあるよ」という競争の要素が共存しています。徹底したユーザー目線から着想しているのが、大変興味深いです。
また、これらの着想が、旅行者との会話やヒアリングに基づくものということも、頭が下がります。ルールNo. 1、当事者に聞け!ですね。
「私だけを見て、好きになって」というのは、恋愛の場面でも怖いくらいです。何かにつけて自分の主張ばかり通しがちな情報発信者の私たちですが、情報の受け手の立場をよく考え理解している、ナットクの事例でした。
そんなわけで、自治体の観光サイト、期待しています!