ケイスケホンダの英語をお手本に

サッカーには詳しくないアラフィフのわたくし、中田英寿さん(1977年生まれ)に近い世代ですが、大変近い存在に思えるのは本田圭佑さん(1986年生まれ)です。もちろん、お会いしたこともなくまったく近くないのですが…。

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海外のチームに移籍するのは、中田選手も成し遂げていて、流ちょうなイタリア語で話されていたことも記憶しています。それに対して本田選手は英語、むしろ国際的により通じる言葉で、より多くの海外チームを渡り歩いていることも、関係しているのかなと思います。

私が本田選手の英語のスピーチが好きな理由を、まとめました。

簡単な言葉で、難しいことを話せる

まずは言葉のセレクト。中高生が分かる単語を使っていて、「これでいいんだ!」とものすごく励みになります。

2014年1月、ちょっともう有名な話ですが、ACミラン入団会見。緊張が走る赤の内装をほどこした会見場に多数のメディアが詰めかけた中、落ち着いてゆっくり話す本田選手が印象的でした。

“Why did you choose AC Milan?”
(なぜACミラノを選んだんですか?)
“That’s easy. I just ask my little Honda in my heart. Which club do you want to play, I asked. The answer, I want to play AC Milan. That is the story when I decided.”
(それは簡単。心の中にいるリトル本田に聞いた。どこでプレイしたい?そうしたら、ACミランでプレイしたい、と。それが決めた時のストーリーだ。)

カッコつけて言うならば「内なる声に従った」みたいな感じだと思うのですが、そうすると「内なる声って?従うって?」となってしまうのです。それを、小さなオレに聞いたと言い換えた、その発想が素晴らしいです。

ジョークで引き付ける

英語でのスピーチは、ジョークがないとダメだと教わるくらい、聴衆を和ませ距離を縮めるために必須なのが笑いだとされています。同じ入団会見で、記者から答えにくい質問が出ました。

“Can you explain what is the samurai spirit? Many Japanese colleagues say Honda will bring to AC Milan the samurai spirit Can you explain to us what it is.”
(サムライの精神とは何か説明してもらえますか?日本の選手らは、本田選手がACミランにサムライ・スピリットをもたらすだろうと話しています。)
“I never meet a samurai, so I don’t know that is true, but…”
(私はサムライに会ったことはないので、本当かどうかは分かりませんが…)

会場は、英語が分かる記者が、息がこぼれるような笑いをし、張り詰めた空気は少し和みました。そして本田選手は続けます。

Photo by Prasanth Inturi from Pexels

“I think Japanese men never give up, and strong mentality, and we have good discipline. So I think I have, too. Just I want to show that spirit on the pitch.”
(日本の男性は決して諦めない、強い忍耐力を持っている、そして規範を保つことができる。だから自分もそういう素質を持っていると思う。その精神をフィールドでも見せていきたい。)

サムライに会ったことがない、を言わずにこの答えから始めたなら、とても平凡な回答になります。初めにジョークを言ったことで、精神論よりも、むしろ本田選手の余裕や臨機応変な対応に目が行きます。

こちらの回答も、決して難しい言葉は使っていません。disciplineくらいですかね。集団の規律のことで、数えられないので a はいらない名詞です。実はそういう細かなところも、よく知っておられる感じです。

原稿に頼らず、自分の言葉で話せる

2016年6月、本田選手は、国連財団 (United Nations Foundation)でユース担当のグローバル・アドボケート(Global Advocate for Youth)というアンバサダー職につきました(プレスリリース)。国連基金は国連機関ではなく、アメリカの非営利団体で、CNN創業者であるテッド・ターナー氏の寄付をもとに1998年に創設されています。

本田選手の発言を見ていきましょう。

“Only YOU can make your dream come true. This spirit makes an independent person. If everyone has this spirit, local production for local consumption becomes possible.”
(自分だけが、自分の夢を実現させられる。この精神こそが、独立した人間を作る。もし誰もがこの精神を持てば、地産地消が可能となる。)
“We look forward to making impact investments to help the children and supporting UN global goals.”
(私たちは子どもたち支援のためインパクトのある投資をしていき、国連のグローバルの目標の達成をサポートしていくことを、楽しみにしている。)

「地産地消」(local production for local consumption)「投資」(investment)が少し難しいですが、それ以外は相変わらずシンプルな英語です。

もう一つ素晴らしいのは、この動画でも、本田選手だけがメモを見ていないということです。続く3人は、おそらく本田選手よりも本業で多くのスピーチをこなしてこられた方々でしょう。もちろんプロンプターという、スピーチ原稿を観客の側に置いて読めるような機器もあるのですが、それは使っていないと思われます。だからこそ、ゆっくりではあっても、自分の言葉で話すのが素晴らしい。伝える役割、アドボケートとして、伝わるように話しています。

本田選手の英会話コーチやスピーチライターも存在するとは思うのですが、そういった一流のサポートからスキルを習得し、ご自分のスタイルを完璧に作っていく本田選手から、目が離せません!何よりも、次世代の育成に目を向けて下さっていることが嬉しく、世界のホンダであり続ける姿を、いつも信じています。

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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