芸人先生2 #16 【最終回】 爆笑問題、生きるために仕事すればいい

今回も爆笑問題さんが、ポテトチップスのコイケヤさんを訪れます。爆笑問題さんは、時事ネタ漫才で時代を斬って31年。一方のコイケヤさんは、日本で初めてポテトチップスを量産化したことで知られます。トップ同士の風格が感じられる場で、どんなアドバイスが飛び出すでしょうか?芸人先生2、惜しまれながらの最終回(2019年 8月26日放送分)をお届けします。

「自分の看板を磨き直そう」

「今日が最終回なんです」「実は不祥事がありまして…」「ないよ!やめろ!」といつもの辛口ボケと即突っ込みの展開。

社員のお悩みを聞きます。「ヒット商品、ロングセラー商品を生み出せていない」「工場のパートさんにおすすめの商品を聞かれて、パッと答えられない」(これには、太田さんが「それ、わりと絶望的だよね」と返します)。長く愛される定番商品を持っていると、逆にそれが呪縛になっていないかと。

この状況に、爆笑問題のメッセージは「自分の看板を磨き直そう」つまり、王道をより生かすという視点です。若い社員さんだと、どうしてもヒット商品を自ら生み出したいと考えがち。実際、自分の好きなモノを商品化したく「カルボチーズ」(カルボナーラ味のポテチ)に取り組んだ社員さんがいました。濃厚で本能のままに食らいつくというブランドのコンセプトのわりには「カルボチーズ」が上品に聞こえてしまい、名前負けした結果商品化にはつながらなかったそうです。(味が美味しかったら、売れたかなーとも思いますが…。)

別の社員さんで、ポテチの「もも味」「バナナ味」を出したものの、奇をてらったと言われうまくいかなかった、というケースもありました。プレスリリースを拝見したところ、2015年、どうやらフルーツグラノーラなどに対抗して、朝食市場に参入したかったようです。うーん、その判断は合っていたのかな?

https://koikeya.co.jp/news/detail/594.html

爆笑問題さんのようなトップを走る芸人さんから「やっぱり王道で勝負してこそ」という答えは意外な気もしますね。とがっていると言われる爆笑問題さん、実はオーソドックスなボケとツッコミ、つまり王道。表面は新しいけれど、中身は古典的なところに落とし込む。旬なネタはみんなが気にしていて、聞きたがっているから、話題にする。定番を新しい話題とリンクさせるのが、世の中で受け入れられる重要なポイントだそうです。

例えばということで、元号が変わった日のことを取り上げた漫才VTR。「新年号の号外でーす」と号外を配っていたら(田中さん)、サラリーマン(太田さん)が「聞いた?新年号、号外だって」「バカじゃねーか!ちがうよ」というオチ。

世の中をしっかり捉える

何が今話題なのかを、しっかり掴むことは大切だが、それ故悩んだこともあったそうです。東日本大震災です。芸人たちは、震災後どうやってネタを作ればいいかと考え抜き、震災にふれないネタを作っていく。爆笑問題のお二人は、「自分たちがこんな大きな出来事を扱わないとしたら、視聴者はきっと余計にそのことに意味を持たせてしまう、そこまで深刻かと思われてしまう。どうしたら、震災の話題に触れながらネタにできるか」についてすごく考えたそうです。

最終的に、広告がポポポポーンという状況になったのを、笑いに変えました。

震災そのものや、傷ついた人たちを扱うのではなく、それに動揺している世間に共感を求めた、それが芸であり、なんでもクリアしていくための武器になると話します。新しいことに食いついても、王道を捨てることにはならない。これは、スポーツでも「型(基礎)が大事」と言っているのと似ている気がしますね。

王道ポテチで勝負するには?

さて、のり塩を生かして、どうアレンジしたらよいでしょうか。太田さんのアイデアはこうです。「のり塩こなごな」袋の底に入っている粉(クラッシュしたポテチ)が美味しいので、それを扱う。「のり塩全5枚」一枚一枚は普通だが、たいそうな箱に丁寧に入っていたら買ってしまうかも。ポテトはもう飽きたから、「ポタト」。

若干のアレンジを加えることで、ちがった角度や視点を持たせる… 専門家の例では、定番が生き残るのは定説で、リバイバル消費というそうです。インスタントカメラのチェキは1970年代に流行った後、デジカメに負けてしまいました。ところが、デジカメより前のカメラを知らない若い人たちにチェキが受け、デザインも一新したところ、V字回復を遂げたそうです。よいものは必ず復刻していくので、すでに愛着を持たれているものは、アレンジすることでロングセラーになるようです。

ネーミングで新しく見せる

ネーミングやパッケージで売り上げが変わったりもするため、課題として「たこ焼きをアレンジする」が出ました。ソースを中に入れる、熱いのではなく冷やして出す、など何でもOKです。受講生からたくさんのアイデアが出ました。

  • 「フレンチたこ焼き」ナイフとフォークで食べます。デートに。
  • ソースに溺れるタコの船(ソースに浸してしまう)
  • タコ丸1匹入れた「大阪ころがし」話題になりそうです
  • アツアツなので絶対やけどしてしまう言ってしまう「やけど玉」
  • 一口でほおばりたいが、猫舌なのでたこ焼き自体を小さくして、ストローで吸う「タコオカ」お出汁が入っています。太田さん「くだらねえ」と言いつつお気に入りのよう。インスタ映えもねらいます。
  • 逆たこ(中にソース)
  • タコぶっ刺し焼き(たこ焼きを串刺しに)
  • 甘くないソースフォンデュ(たこ焼きのソースをファウンテンから付ける)
  • フォンダンたこ焼き(中はトローリ、バレンタインにどうぞ)

小池会長登場!

休憩時間は名物社員に会うコーナーなのですが、今回は二代目である小池孝会長を訪ねます。お父様がのり塩を、現会長はカラムーチョを生み出したのだそう。

のり塩は大エース。そもそもアメリカ人がポテトチップスを手作りしていた時代、おやじさん(和夫氏)が 「こんな美味しいものは売れる」と確信して大ヒット。二代目のプレッシャーはそれほどなかったが、新しいものをやらないと伸びないので、全然ちがうものを作ろうとしたのがカラムーチョ。激辛ブームの走りとも言えます。男性向けにおつまみとして辛いものにし、価格も200円に上げて珍味売り場に置こうと思ったところ、スナック売り場の扱いで子どもが食べてクレームがあったらどうするかと言われ、置いてもらえなかったそうです。当時コンビニエンスストアの走りで、酒店からコンビニオーナーになることが多く、抵抗なく置いてもらうことができ、売り上げのトップを走りました。時代を感じますね。

おかしには「楽しい」という体験が必要。イベントの思い出と一緒に記憶される、エンタテインメント。食べ終わったときに楽しさが残る。毎日を楽しくワクワクさせるものとのお話でした。

仕事を超えた、普段のお悩みに答える

最終回と言うことで特別に、普段抱えている悩みに爆笑問題が答えて下さるそうです。

質問「商品を作っていく時に、決裁権を持った人の意見で方向性が変わることがある。ネタ作りなども、先に振っておくべきか?」

Photo by 祝 鹤槐 from Pexels

「わが道を突き進めばいい」と言うかと思った太田さんの答えは、こうでした。「誤解されるかもしれませんけど…」と前もって伝えてから、「俺たちこうやりたいんです」と本音を言う。急に危ないことを言ったらお客さんでも引いてしまうそうです。上司が思うであろうことを想像するのは大切で、それを考えないと突っ走ってしまうと、人の共感を得られない、だから今のスタンスでよいと思う。

質問「働く意味が分からない。自分は社会人1年生で生活するためにお金が必要だが、爆笑問題さんのようにすでに十分に稼いでおられる方が働くのは、なぜか」

太田さんはこう伝えました。なぜ仕事を続けているのか?働くにはお金、それしかないよ。小林秀雄という哲学者で文壇の巨匠(「考へるヒント」「本居宣長」)も、学生たちとの対話で同じことを言った。「ものを書く時の理想は?」と聞かれ、「学生時代から女がいたから、ものを食わすために、生活のためにものを書いた」その10年、20年後で書きたいものを書こうかなと思うようになった。理想は後からついてくるんじゃないの。俺たちも生活できるようになりたい、漫才だけで食えるようになりたい、という思いから始まっている。

質問者は「いいんだな、と安心した」と本音をもらし、太田さん「やめないでね」とナイスフォロー。田中さんもすかさず「ありがとう」と拍手につなげます。

太田さんから最後に

小林秀雄さんの続きで、「直感が必ず先に来る、理屈は後からついてくる、その逆は絶対あり得ない。マーケティングやコンセプトというのが先に来ると、おかしくなる。「これがいいんだ!}という直感が先で、それを説明するのに言葉が必要ということ。

感性を磨け、というのはそういうことなのかもしれませんね。

ナレーションで締めくくりです。「芸人さんが先生。ネタ作りも、楽しい見せ方も、人を笑わせる方法も、普段の生活に重なることがあると、とっても勉強になりました」ナレーション担当の桜井玲香さんのコメントでした。

芸人先生3、待っています!

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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