世代を超えて受け継がれる「みんなのレオ・レオーニ展」(混雑情報付き)

レオ・レオーニと言えば「スイミー」、「スイミー」と言えばレオ・レオーニ。逆にそれ以上はあまり知識がないので、行ってきました。9月29日まで、損保ジャパン日本興亜美術館(旧・安田火災美術館)で開催されている、「みんなのレオ・レオーニ展」です。

入館前、少しだけ節約に、駅近くのチケットショップで券を買っていきました。大人1,300円のところ、1,080円で招待券をゲット。

工事中で入口が分かりにくい!

スカートビル、ご存じでしょうか?新宿西口の一つの名物風景となっています。

後でわかったのですが、美術館に行くのは信号を渡って左側(黄色いポスターの方)に進めばよかったのです。あー、いわゆるビジネスの受付である矢印を目にして、右側に進んでしまいました。

グルーっと回って分かりづらかったです。上に行く小さな階段を見逃さないように!ファミリーマートまで来たら行きすぎです。

やっと入り口までたどり着きました。

上層階の美術館へ

美術館は42階で、チケットも上で買えます。耳がプツッとなります。

受付(お顔はぼかしています)

ファミリーでの来場が過半数

週末だったからか、とにかく子どもの来場が多く、子どもがいるということは大人がいるので、にぎやかな展覧会です。走り回ったりうるさいということもないのですが、大人中心の場所に身長100センチくらいの小さな人がたくさんいるのは新鮮。読み聞かせしている親子が多いです(文字が読めないですからね)。

入場より手前のコーナーでも読めます

アニメを見ていたら、「スイミー」でにじいろのくらげが出てくるところで、子どもたちがおもむろに反応し、レオーニさんが子どもの感性を持った方だとすぐに分かりました。

入場前のインスタスポットも、子どもうじゃうじゃでお母さん方がシャッターを切り、いわゆる「映え」を狙う世代とちがう光景が展開されています。ねずみのフレデリックがお迎え。

もう一つ特徴的だったのは、外国の絵本としてカタカナが混じることです。子どもの耳には興味をそそられます。ねずみのフレデリックという名前もそうですし、ねずみが好きなパルメザンチーズ、ねずみの行動半径にあるサイロ、そして物語に出てくるお祭りのマルディグラ(日本語訳は「ざんげかようび」)。

日本語をつけているのは谷川俊太郎さんなのですが、含意(connotation)、つまり直接的な言葉の訳よりは、意味をくみ取ることを大切にしているということでした。

芸術のメッセージ性

今回の一番の収穫は、「あおくんときいろちゃん」です。子どもの無垢さやとまどい、大人の不条理の世界が描かれていて、何とも言えない気持ちになります。

この本をイチオシしていたのが落合恵子さんで、この本はクレヨンハウスを設立する理由にもなったそうです。さすが!

この絵本は1959年に出版されており、前年のブリュッセル万博でレオーニはアートディレクションを担当していましたが、 当時のアメリカの人種差別的理由によりパビリオンが閉鎖されたことへの抗議として、「あおくんときいろちゃん」が誕生したそうです。レオ・レオーニはユダヤ系のイタリア人で、1939年にアメリカに亡命しており、ご自身の主張とアート作品が近い方であると思われます。

別の作家さんですが、私の大切な絵本の一冊である「しろいうさぎとくろいうさぎ」(1965)(原題:The Rabitts’ Wedding、1958)のことを思い出しました。これが、人種間の結婚を描いているとして非難を浴びたことは、アメリカらしい解釈でもあり、単純にショックでした。

レオーニは「芸術家は作品を通して社会に貢献しなくてはいけない」と述べてもおり、絵やデザインの意味、メッセージ性、伝えたいことが明確であると分かります。

芸術家の生計

もう一つの収穫は、1950年代、レオーニさんはグラフィックデザイナーとして活躍していたことです。亡命前のイタリア時代でも広告を手がけていますが、亡命してからラジオの広告、American Cancer Societyやユネスコのポスター、そして「Fortune」の表紙を手がけるのが1950年代です。

新聞(広告)や雑誌は全盛期ですから、売れっ子のデザイナーだったことが想像できます。今見ても秀逸なデザイン。

日本でも例えば、1990年代に「TV Taro」(テレビタロウ)という雑誌で辰巳四郎さんが俳優の似顔絵のイラストを描かれていたり、「Hanako」ではKen Doneさん(オーストラリア)が表紙を飾っていたり。まさに雑誌の「顔」だったと思います。

(c) 東京ニュース通信社

https://www.kendone.com.au/

レオーニさん、絵本作家として確立するまでは、デザインがライスワーク(飯のタネ)だったというわけですね。

モノタイプという手法

お馴染みの「スイミー」を改めて読み返すと、イラストではなくスタンプを押したかのように、色付けされていることが分かります。モノタイプと言って、紙や薄いアクリルプレートなどに色を乗せてから、乾かないうちに別の紙に転写するような形で、偶然の模様を楽しむ手法なのだそうです。

モノタイプできれいに出た模様を好きな形に切って、コラージュとして使うことができ、レオーニ作品はコラージュを多用しています。コラージュをハサミで切ることも、手でちぎって紙の繊維が分かるように輪郭を取ることもあり、芸が細かいですね。

混雑状況・所要時間

私の場合、10:30に会場入りし、ひっきりなしに家族連れがエレベーターで上がってくる状況でした。会場内は動けないほどの列ではないですが、増える一方ですので、開場間もなくをお勧めします。

滞在はぴったり2時間でした。ツイッターでも、1時間半と書かれている方が多かったですが、原画を見た後絵本を読んだり、アニメ化された作品や、20分のドキュメンタリービデオがあるので、原画以外に30分見ておいた方がよいかと。買い物したい人は、もう少し必要かと思います。

たくさんの人の、作品への愛情があふれている展覧会でした。

この木は、「あいうえおの き」という作品に出ています。

42階にも展示を出てすぐにショップがあり、主に展示に関係しているオリジナルグッズが売っています。

一方、1階のショップは誰でも入れ、展示に関係ないものも含めて、充実したラインアップです。

ネズミは嫌いなので、ミッキーよりドナルド派、ジェリーよりトム派の私ですが、フレデリックの静かなアーティストの生き方は粋ですな。

フレデリック

コーネリアス

「みんなのレオ・レオーニ展」

2019年7月13日から9月29日
午前10時~午後6時

https://www.sjnk-museum.org/

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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