コッポラ監督の『ランブルフィッシュ』という名作

現役の映画監督で鬼才の一人、ラース・フォン・トリアー。一時は映画界を追放されかねない物議を醸し出したのですが、問題発言や問題行動と切り離すならば、この監督の作品は本当に楽しみです。監督は大の飛行機嫌いでもあるので、日本で会うことは一生かないません。だとしたら、海を越えられる作品は必ずチェック、と思うわけです。

新作『ハウス・ジャック・ビルト』を明日見に行くのですが、主役に抜擢されたのはマット・ディロン。アラフィフ世代には特別な俳優さんなので、今日は彼の作品でも異色の名作『ランブルフィッシュ』(1983)について紹介します。

監督がF・コッポラ

『ランブルフィッシュ』公開の一年前、マット・ディロンの他にトム・クルーズ、ラルフ・マッチオ、ロブ・ロウ、パトリック・スウェイジ、エミリオ・エステベスなどスターの勢ぞろいする『アウトサイダー』という青春映画がありました。監督はフランシス・F・コッポラです。オリジナル予告編動画はこちらでご覧いただけます。

コッポラ監督といえば『ゴッドファーザー』シリーズの巨匠で、なぜアイドル映画を撮ったのか謎ですが、その次に発表された『ランブルフィッシュ』もさらに謎なのです。

マット・ディロンが主役だが…

本作品と時を同じくして、日本ではミッキー・ロークがセクシー俳優としてバカ売れしていたため、主役のマット・ディロンは、ミッキー・ローク演じるギャングの伝説的存在「モーターサイクル・ボーイ」の「頼りない弟」を演じきっていたように思います。ミッキー・ロークはウィスパリングボイス!聞き取れないくらいの呟きを繰り返しています。

青春映画ゆえの自分自身との葛藤が、当時のマット・ディロンのファンにはもどかしく、今観ると初々しくもあります。そして喫煙率たかっ!も時代を象徴しており、不良と言えばくわえタバコが重要アイテムとなっています。

アイドル映画なのにモノクロ

コッポラ監督が撮りたいものを撮ったというのが推察なのですが、マット・ディロンを再度起用したにもかかわらず、恋愛よりもギャング映画に仕上がっています。ランブルフィッシュというタイトルも、殺しあう魚の名前。また、空の雲が流れる様子を早送りしたような、詩的な映像も随所に散りばめられており、独特な音楽も含めて映画通好み、アイドル映画泣かせの仕上がりです。

そして、ほぼ全編モノクロ。モノクロ映画は売れないということを証明したかのように、興行成績は『アウトサイダー』の10分の1だったようです。『アウトサイダーの』約2,570万ドルに対して、『ランブルフィッシュ』は約250万ドル。コッポラ監督は、この成績を盛り返すかのように、次の『コットンクラブ』では『アウトサイダー』並みの興行成績を叩き出します。

キャストもチェック

デニス・ホッパーは本作品クレジットの中で一番最後に名前が出てくるので、特別扱いですが、その他にニコラス・ケージがややアイドル的にバッドガイを演じるのが笑えます。その意味で群像劇であり、まだ子どものソフィア・コッポラが出てくるのも楽しめます。

オリジナル予告編動画、こちらでどうぞ。仏GQの記事でも『ランブルフィッシュ』は傑作扱いでした。

肝心のマット・ディロンは、アイドル路線でいわゆる「いい人役しか来ない」ことに苦しむことになるのですが、私のもう一つのお気に入りである『クラッシュ』(2006)についてもいずれ紹介したいと思います。

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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