「カメ止め」人気が止まらない!

『カメラを止めるな!』(2018)

kametome映画評論をする者の性分として、映画を見た後にどうしてもしたくなってしまうことがある。
それは、その映画を①監督の過去の作品と比較し、テーマや表現の側面から分析すること、そして②映画史の大きなカーペットの上に作品を位置づけようとすること。

カメラを止めるな!』(2018)は、上田慎一郎監督の初長編作品で、すでにご覧になった方も多いと思う。作品は、大きく2つのパートに分かれている。前半はホラー、後半はコメディだ。

映画自体にフォーカスを当てた作品、映画について自覚的である作品は、Self reflexive と呼ばれる。『カメラを止めるな!』も、映画制作自体がテーマだ。

映画について自覚的な作品としてよく例に挙げられるのが、ウッディ・アレン監督『アニー・ホール』(1977)、ロバート・アルトマン監督『ザ・プレイヤー』(1992)。シーンでは伊丹十三監督『タンポポ』(1985)など。

 

前半のホラーは、37分ノンストップ。ハンドカメラの手ぶれも、長回しという技術も、これまであったやり方だ。ビデオカメラの一般化とともに、カメラの機動性が高くなり、少人数でも扱いやすくなり、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)と似た印象。これも低予算で大ヒットを記録した。長回しは劇映画でも全編ワンカットを謳っている作品があり(フィリピン『人質交換』(2015)など)、ドキュメンタリーは基本カメラを止めなければワンカットになる。

後半はコメディ。サスペンスと似ているが、自分が知っていることを誰かは知らない、というところにギャップが生じ、笑いが起こる。「刑事コロンボ」シリーズをご存じだろうか。犯行シーンはいつも冒頭、そして犯人を追い詰めていく刑事さんに、観客は同化しつつ、名案にうなり、共感を寄せる。

「カメ止め」で素晴らしかったのは、キャスティングだと思う。劇中劇の映画監督は、濱津隆之さん。ペーソスたっぷりの表情で、観客のエールを集めるキーパーソンだ。劇中劇で助演女優となるしゅはまはるみさんは、個性派の小林 聡美さん、片桐はいりさんらの系列に入れてよい大物感あり。そして、主演女優の秋山ゆずきさんも、女性に嫌われるタイプの女性を好演している。

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

おすすめ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です