レスリーに惚れる!『欲望の翼』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
今日は旧作『欲望の翼』(1990)です。王家衛監督の長編第2作とのこと。あらためてすごい感性の持ち主です。
原題は『阿飛正傳』(Ah Fei’s True Story)、この阿飛というのが、自由奔放で目的を持たずに生きる若者、つまり主人公ヨディ(レスリー・チャン)を指すそう。英題は『Days of Being Wild』で、荒くれの青春の日々、みたいな意味になっています。『欲望の翼』もいい訳ですね。1987年の作品、『ベルリン・天使の詩』を少し連想したりもします。
『欲望の翼』へのひと言
オム・ファタール、レスリー!
ファム・ファタールなら聞き覚えがあるでしょうか。魔性の女というか、男を狂わせる謎めいた女、よく出てきます。
本作だと逆ですね。みんなレスリーに夢中になってしまう。そんなレスリーは、掴みどころがなく、時間を弄んでいるようにも見えます。
私が好きなのは、レスリーが自宅でひとりで踊るシーンですね。例によって白いランニングシャツなのですが、本来ペアでの踊りを、女性がいる体で一人でやってみせる。カメラは部屋の外からゆっくりパン移動をし、障害物を挟みながら鏡に映るレスリー、移動するレスリーを捉えます。近くで見ているような、ちょっとしたドキドキも感じながら、レスリーの魅力に惹きつけられます。
そしてあのマギー・チャンが冒頭出てきますが、オーラのなさと言ったら! 彼女の演じるスーも、レスリーに引っ掛けられ、一時期お付き合いし、振られるという展開です。もともと群像劇なので、スーが振られても、そのスーを好きになる人が登場することになります(しかもアンディ・ラウ演じる警官!)。ただ、どうしてもレスリーの存在感に、作品全体が影響されている感じ。カリーナ・ラウも、踊り子さんだから本来は男性を追わせる立場なのに、レスリーにハマり思わず追っかけてしまう。そして、アンディ・ラウすらもレスリーが気になって気になって仕方ない。
嫌いになりたいのになれない、誰もが片想いするレスリー。
罪な人だ!
実験的な映像
まず、フィルム全体が緑っぽいことに驚きました。劣化の要素もあるとは思いますが、そういう処理なんだと思います。フィルム・ノワール的に、全体が暗いことも特徴。スーと警官が出てくるシーンは、影もすごいです。こんな美男美女を見せないことがあるか、というくらいに。
画面構成が実験的なことは、前述の通り。どこを切り取ってもポストカード的な美しさ。クリストファー・ドイルあっぱれですね。
本作の後半は、ヨディが実の母親を探し求めるためにフィリピンに向かいます。香港の雑踏とは対照的に、湿気の高そうな緑のジャングルが出てきます。これも、ヨディが別の世界に飛び込んだことを示す上で、画面のテクスチャーが変わり重要。
最後、なぜトニー・レオンが出てくるかについては、Wikipediaに解説がありました。もともと二部作で、トニーが第二部の主役だったのに、予算がなくなってしまったのだそうです。
しかしこの低い天井でのワンシーンだけでも、印象に残るトニーはさすがですね。
かくして、私は王家衛監督ファンでもあり、レスリーファンでもあります。素敵な作品をありがとうございます。
今日はこの辺で。