家族は血縁か、『大きな家』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

ふと観てみようと思った、『大きな家』(2024年12月6日公開)。竹林亮監督、都内の児童養護施設の話だと言います。PARCOで扱ったのが珍しい感じもするので、どんな社会派かと興味も膨らみ。

『大きな家』へのひと言

血縁が大事な、思春期のこだわり。

本作を見て、日本らしいなと思ったし、思春期だなとも思うことがありました。

日本では家制度があるように、家族という形態が社会的に重要視されています。戦中や終戦直後は養子縁組も盛んでしたが、現在一般的かと聞かれると、身近には聞かないレベルです。

本作をこれからご覧になる方のために多くは語りませんが、児童養護施設で育つ18歳未満の子たちは、「家族○○」(家族団欒、家族旅行、家族行事、家族写真)が実在するものではなく、イメージの世界です。そして、親御さんは現存で、たまに外出できる(会いに行ける)状態の子たちもたくさんいます。

だからこそ、この生みの親との関係(血縁)というものに、過剰なまでに重きを置きます。きっと、それを否定したら自分が保てなくなってしまう。今の生活が幸せとも、恵まれているとも、決して思いたくない自分がいます。

もしこれが寮で、自分の意思で入るような場所であれば、管理する方々や仲間を「第二の家族」と称したりもするでしょう。でも、児童養護施設の子どもたちはそこに一線を引いて、私はここに住んでいるけれど、同居者はあくまで他人である、というスタンス。そんなふうに感じているなんて、新しい発見でした。

この施設ではネパールへのスタディツアーも実施していて、同じ児童養護施設を訪問したりします。そこでは、「ここで暮らすとみんな家族のようで寂しくない、楽しい」と話す子たちがいて、家族感のちがいが顕になります。一方で日本人は、「私にとってここは仮の地だから、ここにいる自分を認めてしまったら悲しさをこらえたり我慢したりする自分が浮かばれない。だから肯定することはできない」と思えるのかもしれません。

親と一緒に住めない子たちであっても、決して親のことを悪く言いませんでした。そこにも、いつか来る未来を待つというような思いを感じました。

大きな愛に包まれる

私自身、愛情不足という思い込みから「こじらせ女子」をしていた経験がありますし、思春期から30年以上経って理解できたことも、たくさんあります。

例えば、この世に生まれてきたのは、10ヶ月いのちと向き合ってくれた人(母親)がいるからであり、自分に名前がついていることは、愛情を持って名前というギフトをくれた親がいるからだということ。すでにお金に変えられない大きなプレゼントを受け取っていること。

そして、誕生日の分だけ歳を重ねて生きられたという奇跡。施設の子どもたちであれば、屋根のある家があり、温かい食事があり、お弁当も作ってもらえて、試合にも見にきてもらえている。親でない人たちから、ものすごい愛を受け取っていること。

こちらの施設にはシスターがいらっしゃるので、キリスト教ですね。無限の愛、減ることのない愛がベースになり、愛情いっぱいのスタッフが親と同等の対応をしています。おそらく住み込みでしょう。辛抱強いスタッフの皆さんですが、子どもたちはかなりの塩対応。それも思春期だから、織り込み済みかもしれませんが、「“かわいそうな”子どもたちに感謝されたい」なんて意図で始める人がいたら、きっとすぐに心が折れてしまうでしょう。

どんな環境に育った人でも、環境を「当たり前」と捉えるか、「ありがたい」と捉えるかで、人生がちがってきます。実際、施設の卒業生ほど、ありがたみを感じているようで、大人になった証拠と感じました。

横に座る感覚

作品を観てよかったと思えたのは、間接的にではあっても、当事者の思いを知れたということです。これは、「ヒューマン・ライブラリー」という手法にもありますが、例えば障がい者、同性愛者、難民、とラベルがついた人たちと会話することで、その人となりを知る方法です。

カメラは、「いつから住んでいるの?」「どう思っているの?」「これからどうしたい?」と、彼らの本音に近い部分を引き出していきます。もちろん長い年月の撮影であり、人間の先入観も距離感もありながら、いろいろ入り混じった映像を見ています。私たち観客は、ずけずけと児童養護施設に足を踏み入れて、いきなり「あなたの気持ちを聞かせて」とは言えない。だからと言って「知らない」と切り離すのではなく、関心を寄せたいと思った時、名前のある一人一人が浮かび上がるのは、とてもありがたいこと。

最後に。ハンバートハンバートの曲はいいけど、そのせいで『ぼくのお日さま』と混じった!

今日はこの辺で。

映画公式サイト:https://bighome-cinema.com/

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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