女性が人をつなぐ、2024年の東京フィルメックス
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
今日は、2024年11月23日から12月1日まで開催された、第25回東京フィルメックスの雑感をお伝え。
女性、女性、女性!
私が足を運べたのは3本で、『ハッピー・ホリデーズ』(パレスチナ)『DIAMONDS IN THE SAND』(日本・フィリピン)『スユチョン』(韓国)でした。この3作とも、女性が際立っているのが特徴的。一言で言えば、女性の強さ。男性の脆さ、と言ったら失礼になりますが、女性の肝が座っているのです。
『ハッピー・ホリデーズ』
イスラエル・パレスチナ問題の背景が入っていることはある程度予想していたものの、登場人物のかなり等身大な描写に好印象。
女性の仕事や恋愛や結婚。人種、宗教や婚前交渉の考え方。悪気なく威圧的で詮索的な母親。どこにでもある話です。
スカンダル・コプティ監督はお名前から性別が分かりませんでしたが、女性かと想像していたら登壇されたのは男性。素人を演者に使っていることにも驚きましたが、これだけのトピックを混ぜながらジャッジがない編集にも驚きました。演者には台本を渡さず設定だけを伝える。180時間もカメラを回して、時系列に撮る。そのような手法なので、演者のプロフェッショナリズムに頼らないということは、その他のところにコストがかかるのですね。とてもナチュラルで、だからこそ「どこにでもいそう」な家族を見られてよかったです。
『DIAMONDS IN THE SAND』
ジャヌス・ヴィクトリア監督の作品です。日本とフィリピンが舞台で、主人公の中年男性ヨージが、孤独を恐れて出かけたフィリピンで人の温かさに触れる。そんな映画です。
このヨージは、母親が介護施設に入っていた時にケアをしてくれていたミネルヴァさんを頼りに、渡航するのです。
底抜けの明るさ、あっけらかんとしたところはフィリピン人の国民性と言いましょうか。ホスピタリティ産業に欠かせない笑顔もバッチリで、世界中で働いていることも頷けます。ミネルヴァさん自身は、少し日本人のような、寡黙で大人しいところもあります。
ヨージが長ズボン(スラックス)から短パンに変わったところが、象徴的ですごく好き。マニラの気候にもつられて、ゆるみ、一歩開放的になった瞬間です。
『スユチョン』
美術大学で教えているジョンイムは、齢40を超えたところ。キム・ミニが好演していました。この作品のテーマは、「どう自分らしくあるか」ということでもあるし、「世代」ということかもしれません。
学生たちはまだ勉強中のアーティストたち。先生たちは、指導に熱心でどこか浮世離れした印象。ジョンイムが演劇指導のために呼び寄せた叔父は、もう隠居生活をしている俳優。
それぞれの年代で、迷いながら生きている。それが、どこか観客の心を動かします。
カメラは固定されていて、演者の演技や話術にかかるところも大きいです。その分、場面が印象に残る、定着する効果があると言えるでしょう。
さて、もう一つこの3作品に共通するのが、集団として生きるのが「人」ということ。誰かを頼る、相談する、食事をして笑う。日本はスキンシップの少ない国でもありますから、孤独を感じるのは簡単です。女性が人と人とつなぎ、人間らしく生きることを実践する。まさに、今の時代に必要なぬくもりや癒しが、今回の映画祭にも見てとれたと感じました。
英語と多様性
最後におまけですが、今回の国際審査員は、ロー・イエ監督、カトリーヌ・デュサールさん(プロデューサー)、ラ・フランシス・ホイさん(キュレーター)でした。
授賞式でそれぞれが受賞作品の発表をされましたが、中国語、フランス語、英語。ディスカッションはどの言語でされたんでしょうか。
外国語として英語を理解する人は他言語に比べて多いので、英語ができると活躍の場が広がるのは事実です。しかし、母語はその人らしさを形作るものであり、表現そのものでもある。英語も母語も両方大切なのだと思います。
日本には英語ネイティブに憧れる英語学習者が多い中で、英語はあくまでコミュニケーションのツールなんだという思いを確かにした1日でした。
今日はこの辺で。
映画祭公式サイト:https://filmex.jp/