音楽を楽しみたい、『PERFECT DAYS』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!月曜日の更新が叶わず、失礼いたしました。
ヴィム・ヴェンダース監督の最新作、『PERFECT DAYS』(2023)に行ってきました。東京でトイレ掃除を仕事とする初老男性が主人公。企画段階で「ヴェンダースが東京でトイレを撮る!」という前振りはありましたが、しっかりと、過去と向き合う男の話に仕上がっていました。
では、早速ひと言です。
『PERFECT DAYS』へのひと言
音楽映画として楽しめる。
さて、私にとってヴェンダースと言えば、ロードムービーです。『パリ、テキサス』(1984)しかり、『夢の涯てまでも』(1991)しかり。
そして、残念ながら、舞台である東京はロードムービーに向いていない。人と車がひしめき、旅をして人が変化する様子はありません。むしろ、変化を拒絶するかのように、同じ毎日が続きます。
しかし、よきサウンドトラックは健在。役所広司さん演じる平山は、命名するなら「平成男」。カセットテープ、フィルムカメラ、ガラケーと、平成初期ならまだギリギリ使えていたものを、令和の時代に使っています。彼の中で、時が30年くらい止まってしまった可能性あり。その、カセットテープから流れる音が、センスいいのです。
ヴェンダースだから見に行ったファンとして、言いたいことはあるからこそ、音楽ならピュアに楽しめる。そんな一本でした。
水つまりは浄化
水といえば浄化、というのは紋切り型解釈かもしれませんが、人間として過去を水に流してやり直したい瞬間は誰にでもあるはず。
本作品では、単調な毎日が続くので、どこでターニングポイントが来るのだろう、と待ち構えてしまいます。物語が始まってから、登場人物が加わったところで「承」、その後なかなか「転」が訪れないのですが、ここかなと思ったのが、三浦友和さんと川縁で話すシーンです。ここはかなり見応えがありました!平山が子どものような無邪気さを出し、吹っ切れた様子。「水に流した」「浄化された」感じがしました。しかも大きな流れのなかに。
それでですね、人間も日々排泄しているので、「水に流して」いるわけです。この映画で取り入れてほしかったのは、主人公がトイレで用を足すシーンですかね。公衆トイレの掃除ばかりしていて、自らのトイレシーンがないのは、が少し不自然に感じました。
エンディングが俳句のよう
ヴェンダースと日本について。ヴェンダースは『東京画』(1985)という映画も撮っていますし、『夢の涯てまでも』も一部日本で撮影していますが、今回はどっぷり東京を舞台にしていました。
日本人の私がそれを見たとき、やはりローカルの視点は少し邪魔になった気がします。でも、東京の東側(スカイツリー側)の価値を上げてくれたとも思います。
平山のセリフは削ぎ落とされていたので、むしろ表情や動きが際立つ結果となりました。ただ、外国語映画ならともかく、日本語ならもう少ししゃべらせてもよかったのでは、という思いにはなりました。
そして、エンディングにとある言葉が出てくるのですが、これがまさに俳句のよう。映画文法にも合っていないし、天声人語のよう。これをタイトルにしたかったのか、いやいやちがうだろう。そんな不思議感が残りました。
ヴェンダース監督は78歳。日本で撮ってくださってありがとうございました。
公式サイト:https://www.perfectdays-movie.jp/