『夢の涯てまでも  ディレクターズカット』(1994)

『夢の涯てまでも  ディレクターズカット』(1994)

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

2021年11月、渋谷・Bunkamuraル・シネマでヴィム・ヴェンダース監督の特集があり、『夢の涯てまでも  ディレクターズカット』(1994)を見てから、この作品について書きたいと温めていました。

ル・シネマ、満席ですよ。休憩ありの5時間(288分)、そして2,600円!なかなかない機会です。

『夢の涯てまでも  ディレクターズカット』へのひと言

全員クレアに恋をする、夢であり旅。

ヴェンダース監督の作品には必ず、夢の要素、旅の要素があると思っています。

夢も、旅も、さまざまな規模がありますが、今回はとてつもなく大きい。世界を回ってしまうし、夢を記録しようとします。

その中で、「誰、この人?」と思わせる主人公、クレアに目が離せなくなり、他の登場人物も、そして観客も、釘付けになってしまう。

意のままに生きている愛らしさ、そして愛を与えようとしている健気さ。

よく、主人公に感情移入する、没入すると言われますが、『夢の涯てまでも』は、クレアに目が離せない、完全なる傍観者になってしまいます。

私はこの作品に、さまざまな愛の形を感じました。うん、ヴェンダースっぽい!

古典的な三角関係にソルヴェーグ・ドマルタン

その愛されキャラ、クレアを演じたのが、フランスの女優、ソルヴェーグ・ドマルタンさんです。映画公開時に30歳くらいで、残念ながら2007年に他界されました。

女性1人を男性2人が追う三角関係は鉄板。ジャンヌ・モロー出演の代表作『突然炎のごとく』(1962)などがそうですね。

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『夢の涯てまでも』の面白いところは、女性1人&男性2人に変わりはないのですが、男性2人がクレアに惚れているのではなく、そのうち1人はクレアから逃げまとっているのです。

ほぼほぼ詐欺師のトレヴァー(ウィリアム・ハート)が好きなクレア、が好きな作家ユージーン(サム・ニール)という構図。ウィリアム・ハートは特に、「不機嫌なウィリアム・ハート」と名付けたいくらい、さまざまな作品で何かトラブルを抱え、眉をしかめているイメージです。なお、ウィリアム・ハートさんは今年3月にお亡くなりになりました。

作家のユージーンがタイプライターで仕事するシーンがありますが、少しだけ『ベティ・ブルー インテグラル』(1992)を彷彿とさせました。つまり、男性が女性を想う、ユージーンがクレアに恋をし続けるような作品となっています。

旅と夢の可能性と限界

『夢の涯てまでも』に少し似ているなと感じたのが、同年公開のベルナルド・ベルトルッチ監督『シェルタリング・スカイ』(1991)でした。アメリカの白人のカップルが二人の関係性や生活に飽き足りずに、非日常であるアフリカを旅するというもので、気だるさや物足りなさを外に求めて満たされないという悲しい内容でした。

しかし、ヴェンダース監督がちがうなと感じたのは、『シェルタリング・スカイ』が不足感からスタートしているのに対して、『夢の涯てまでも』は好奇心が原動力となって旅をしています。ここが大きくちがい、作品を明るいものにしています。

同時に、作品が進むにつれ、トレヴァーの視界は制限されていきます。夢は「見る」、つまり視覚が司るのですが、わずかな自己犠牲、鶴の恩返し的な場面が展開されます。耳の聞こえなくなったヴェートーヴェンが作曲するような苦悩を感じます。

日本からアボリジニまで、スケール壮大

本作品は独米日仏豪合作と言われており、NHKハイビジョンなど、当時の最先端技術が使われたことでも知られています。そして撮影も、フランス、中国、日本、オーストラリアなど、あらゆる場所で行われました。

そして俳優陣もすべて世界級ですね。ジャンヌ・モローと笠智衆が共演って、ありますか? クレア役はフランス、トレヴァー役はアメリカ、ユージーン役は北アイルランド(ニュージーランド)、探偵役はドイツ、トレヴァーの父役はスウェーデンと、もう世界制覇していますね。トレヴァーの父マックス・フォン・シドーは、イングマール・ベルイマン監督作品に出演しており、『エクソシスト』(1973)の神父役として知られているので、笠智衆さんと同じく国を代表する俳優さんですね。

撮影場所になった日本も、東京のカプセルホテルから箱根での療養まで、やや滑稽なところはあるけれど、丁寧に扱われている感じはします。そして冒頭にカメルーンのピグミーの音楽をカセットテープで聴いたり、後半はオーストラリアの先住民であるアボリジニと共存するなど、そんな詳細にもヴェンダース監督の世界観があるように思います。

濱口監督の『ドライブ・マイ・カー』も国際的俳優陣、是枝監督も韓国俳優を起用した『ベイビー・ブローカー』(2022)などが楽しみですが、今から30年前に実践に移していたヴェンダース監督のワークスペースが広い!と改めて驚きました。

私の心の師匠、ロジャー・イーバート氏は、158分版に対して、星4つ中2つの評価。ネット情報では、淀川長治先生も蓮實重彦先生も、酷評したとのこと。でもそれは158分版だったからかな。私なら、ディレクターズ・カットは購入したいほどに好きです。

最後に、U2のサウンドトラックで締めますね。

参考文献
監督が望んだ『夢の涯てまでも』究極バージョンへの道 https://www.thecinema.jp/article/988
Reviews: Until the End of the World https://www.rogerebert.com/reviews/until-the-end-of-the-world-1992