色づかいが名刺代わりの『アステロイド・シティ』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
根強いファンが多いウェス・アンダーソン監督ですが、やはり監督が作り出すのは世界観というのが世の常。新作『アステロイド・シティ』を観に行ってきました。アステロイドとは、小惑星のことです。舞台は1950年代、アメリカの砂漠の真ん中で、小惑星が落ちた跡が唯一の名所となっているとある町。子どもの頭脳明晰チャンピオンを決める大会を開くため、参加者が集まってくる設定です。ただしこれは演劇で、劇作家がこれを準備している、という二重構造になっています。
『アステロイド・シティ』へのひと言
iPhoneにアンダーソン調があってもいい。
本編のストーリーに踏み込んでもいいんですが、やはり一番気になったのは、写真を加工したようなパステルカラーの景色。白黒のシーンも出てきますが、アンダーソンと言えば、この色調でしょう。
もちろん景色以外に登場人物もちょっと日焼けしていたりと、セット以外の色調もすべてが整っている。これに、緻密さと監督の采配を感じます。この色づかいを楽しむ、ということがこの作品の大きな楽しみなのかもしれません。
ロケ地はスペイン
アリゾナ州あたりに行ったことがある人なら分かる、あの赤茶っぽい土や突き抜ける青空と日差し。アメリカロケだと思ったら、そうではありませんでした。
エンドクレジットを見ていて分かったのが、本作がスペインで撮影されたこと。マドリッド近くにあるチンチョン(Chinchón)およびコルメナル・デ・オレハ(Colmenar de Oreja)という町だそうです。いやいや、どうやってロケハンしたんでしょう。
例えば『ラスト・サムライ』がニュージーランドで撮影されて、日本の森林とちょっとちがうなと感じた人もいるかと思いますが、アステロイド・シティは架空の町。先に書いた「アンダーソン調」とも関連しますが、世界でも場所を選ばず、ご自分のイメージを実際のセットにして撮影してしまうのが、凄すぎます。監督の脳内にある宇宙を見てみたい!
アンダーソン・ファミリーは、やや内輪か?
はい、キャストについて。今回主人公と言っていいのが、戦場カメラマンを演じるジェイソン・シュワルツマン。基本的に人や社会を信頼していない感や、それでも彼の写真が世界的の雑誌のかざる優越感を満たしている感じがとても合っています。彼はフランシス・F・コッポラの甥に当たります。他のウェス・アンダーソン監督作品にも出演していましたが、今回の扱いが大きいでしょうか。
ジェイソン・シュワルツマンが大きく扱われていたのが、彼のデビュー作『天才マックスの世界』(1998、原題Rushmore)ですね。この時ウェス・アンダーソン監督は長編2作目と言いますから、業界歴も長いと言えるでしょう。評論家の中では評価が高い一作です。
コッポラの甥だと書いたのは、プロデューサーがロマン・コッポラ氏、コッポラ監督のご子息だからです。そういう、昔からのファミリーと映画制作している感じもあります。
エドワード・ノートン、スカーレット・ヨハンソン、ティルダ・スウィントンらが複数回スクリーンに登場しているのは、私も分かりました。マヤ・ホーク(イーサン・ホークとウマ・サーマンの娘)は頼りない学校教員を好演しました。
ダイバーシティの観点から、かどうかは分かりませんが、アジア系の親子も登場します。父親役はスティーブ・パークで、彼は『フレンチ・ディスパッチ』にもシェフ役で出ていましたが、この時はセリフのない見せ物的キャラだったかと。息子役は、イーサン・ジョッシュ・リーです。これまでアンダーソン映画はアメリカ・ヨーロッパ系の人が多かった気がするので、このグローバルな雑多感に期待です。
マット・ディロンは機械工役、ウィレム・デフォーは教授役だったので分かったけど、そうか、マーゴット・ロビーは女優役だったか。みんな監督の第ファンなのでしょうかね。
キャストを見るのも楽しい、相変わらず内容は難解な、ウェス・アンダーソンでした!