ヒーローは誰?『AIR/エア』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
2023年作品でありながらAmazon Primeで観たのが、あのベン・アフレックとマット・デイモンコンビが送る『AIR/エア』です。ナイキが「エア・ジョーダン」という伝説のシューズを売り出すまでのお話です。
日本人でも、コンバース、アディダス、ナイキの3つなら分かるでしょうか。1980年代の、コンバースとアディダスの2大巨頭だったスポーツシューズ業界に、ナイキが食い込むという実話をもとにしています。
『AIR/エア』へのひと言
この作品のヒーローは誰か?
これは結構深い問題です。
作品に出てくるのは、かつての名バスケットボール・コーチ(マット・デイモン)、コンバース社長(ベン・アフレック)、シューズデザイナーのピーター(マシュー・マー)、全員白人。そして、白人と黒人のあいだを取り持つ営業担当(クリス・タッカー)。ここまでが、コンバース側です。
そして選手のマイケル・ジョーダン(ダミアン・デラノ・ヤング)に加え、ジョーダンの父(ジュリアス・テノン)、ジョーダンの母(ビオラ・デイビス)。実際、この母は超重要人物で、アメリカでは3番目にクレジットされています。
「この作品のヒーローは誰か?」と書いたのですが、もう少し広げると、「この作品はバスケットボールについての話か?」という聞き方もできると思います。私だったら「マーケティングの話」と答えるかもしれない。
これだけ売れ続けているシューズに名前がついている、マイケル・ジョーダンは紛れもなくヒーロー。そこに、少なくとも複数名の立役者がいる。デザインした人、予算OKした人、面会のチャンスをくれた人、交渉した人、などなど。言ってみれば、影のヒーローたちがいたわけです。
そういう人にスポットが当たったようにも見えますが、実際その人たちはがっぽり儲けた人たちでもある。生産過程において評判のよくないナイキでしたし、「ブラックを商品に儲けたホワイト」と見ることもできるので、ヒーローと呼んでいいかは分かりません。歴史とはそういうもので、どう語るかによって、善人も悪人になってしまう。
その意味では紅一点のジョーダン母が、いい味出しています。男性中心の社会において、光っております。ぜひご覧ください。
プレイヤーと報酬の関係
これはスポーツや音楽において共通する点なのですが、『AIR/エア』においても、選手がどこまで金銭的に守られているか、というとシビアな世界です。選手や歌手は力のある時期に消費され使い捨て状態、大きなお金は連盟や権利保持者が得ている、というように。
マイケル・ジョーダンはこの歴史を変えた人として、描かれています。
話は少し変わりますが、男性スポーツの方が女性スポーツよりも広告代金が高い、というような性別での”差別”も生まれています。女性スポーツは食い物にされていることもありました。ビーチバレーの女性ユニフォームはビキニで、ノルウェーのチームがこれに反対すると罰金が下された、と言ってニュースになったことも。
選手を一人の人間として守る(金銭的にも、身体的にも)という発想は、もっと進んでいいように思います。
ベンのお得意な1980年代
ベン・アフレックは本作の監督で、出演もしています。彼は『アルゴ』の監督としても有名ですが、あれも1980年代。
あの空気感がお好きなんでしょうか。本作も、音楽などはバリバリ1980年代で、楽しかったです。誰もが同じものを聴いて分かる、というのもネット時代が幕開けする1990年代までの現象ですからね。今から見ると、エキサイティングかつ退屈な時間です。
ベンからは、ぜひもう1本、監督作品として1980年代シリーズを拝見したいものです。
公式サイト:https://warnerbros.co.jp/movie/air/
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