すべての子どもだった大人へ!『秘密の森の、その向こう』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
2022年9月23日公開の、『秘密の森の、その向こう』(2021)に足を運びました。Bunkamuraル・シネマで上映が決まっていたので、一定以上のクオリティの作品だと判断して… 前情報ゼロで見てきました。
では、
『秘密の森の、その向こう』へのひと言
久々に見る、子どもの世界観!
本作品は、キービジュアルにもある8歳の子ども2人が主人公です。年齢は途中で分かるのですが、小学校低学年だろうなぁと思うような見た目と振る舞いです。
子どもの演技って、監督がとことん工夫した映画(アッバス・キアロスタミ監督、ラッセ・ハルストレム監督など)以外は観れたものではない、というのが通例。しかもこの年齢は難しいです。芦田愛菜さんや鈴木福さんのようなカワイイではなく、子どもの無口さや残酷さも含めて。
この作品の、ネルーとマリオンはリアルですね。自分の8歳当時を思い出しました。自分の世界がある。誰かと会って、遊んで少しずつ仲良くなる。そんなふうにご自分の幼少期を重ねた方も、多かったでしょう。
体は六頭身なのに、顔は大人っぽく美人さん。大人ごっこをするのも子どもらしく、笑うとメッチャ子ども。
もちろん作品のテーマとしてはもう少し深いものがあり、世代について描いているのですが、子ども映画として秀逸だと思いました。
あまり知られていない、フランスの森
本作はフランス映画で、主役の子どもたちのワードローブもオシャレです。プチバトーなどでお馴染みの良質のコットン、セーター、オーバーオール、防水のジャケットなど、『フランス人は10着しか服を持たない』という本が出たほどに、流行を追わず大切に着ている感じがします。
その前提で、この映画のタイトルにもあるように、森が作品の舞台。ロケはパリ北西のヴァル=ドワーズ県だったようですが、私には「フランス=森」の印象はほとんどなかったです。どちらかと言うと、ドイツですかね。
さまよい歩きたい驚きのフランスの森10選: https://jp.france.fr/ja/news/list/top-french-forests
森の中にある一軒家が出てきますが、主役は人間ではなく森。風の音が怖かったり、容赦なく雨が降ったり、紅葉でガラッと風景が変わったりします。
そして子どもは遊びの天才。木の実や石ころを道具に投げたり、木を集めて拠点を作ったりと、いくら遊んでも飽きない空間で走り回ります。途中、神隠しに遭うのではと心配したくらい。こちらも、ドイツの「森の幼稚園」を連想させるものでしたが、あー森に行きたい!そう思わされる風景でした。
本作はベルリン映画祭でプレミア上映されましたが、森の感じが、ドイツ人観客にも馴染んだかなと思います。
73分なのにうとうとする理由
思いのほか短い73分。長編ならぬ中編に分類されてもいいくらいの『秘密の森の、その向こう』が、あっけなく観終わるのかと思いきや…。途中で腕時計を見ると、まだ20分ありました。
その理由の一つが、画面が暗いので、夏の太陽やネオンライトのような光の刺激はありません。秋口の自然光や、曇りの薄暗さなどで、どんよりした仕上がりになっています。
また、子どもが主役なので、子ども時間で物事が過ぎる感じもあります。毎日がとてつもなく長い、時間がたっぷりある、そんな感じ。
加えて、大きな声では言えませんが、潜在意識を扱っているように思います。つまり自分の気づいていない声や、本心。だから、どうしても顕在意識と潜在意識を行ったり来たりで、半分夢を見ているかのようになる。
実際、鑑賞後、恐ろしく眠くなり、家で使い物にならない数時間を過ごしました。
この辺りはおそらく配給会社も意識していて、『秘密の森の、その向こう』というタイトルにしたのではないかと思います。原題は「Petite Maman」(プティット・マモン)ですが、これを訳してしまうと面白みが欠けてしまう。その意味では、「森」という比喩も、私たちの意識の広さや記憶の曖昧さを象徴するようで、味わい深いです。
前作『燃ゆる女の肖像』(2019)もぜひ観てみたいです。こちらはカンヌ映画祭でお披露目されたもので、Amazon Primeで配信していました!
映画公式サイト:https://gaga.ne.jp/petitemaman/