コム・デ・ギャルソンと「文化の盗用」問題
2020年1月の、秋冬パリコレクション。 コムサ・デ・モードで複雑な出来事が起こりました。(記事はこちら Comme Des Garçons: Row over white fashion models’ cornrow wigs )
私はこれを見た瞬間、古代エジプトだと分かりましたし、カッコいいと思いました。
デザイナーのRei Kawakubo氏、そしてヘアスタイル担当の Julien d’Ys 氏は、ツタンカーメンに着想を得た、オマージュとも言えるウィッグだと説明します。ただ、攻撃されたと感じた方がいるならば、心からお詫びします、と付け加えています。
抗議した方たちの主張としては、このような細かな三つ編みや編み込み、アフロヘアは、すべて黒人文化と結びつくもののため、黒人以外がこれをすべきではない、ばかげている、ということです。
憧れの対象であっても? そこは少し疑問です。しかし気を悪くした方がおられたならば、昨今のハラスメントと同様、アウトになりますね。
ファッションショーは、服飾を通してデザイナーの世界観を旅するもの、楽しむものであり、ストーリーはすべて「おとぎ話」つまり幻想かもしれません。現実と照らし合わせてどうか、というのは別の問題のような気がします。
例えばデザイナーがサムライにインスピレーションを得て、モデル全員がちょんまげカツラを被ったとしたら、日本人が「文化の盗用」「配慮のない表現」と訴えるかどうか、ですね。なかなか壮観で笑っちゃうかもしれませんが。
しかし気持ちが落ち着かなかったので、エジプト人の友人(カイロ在住)にBBCの記事を見せ、意見を聞きました。
この事件については知らなかった、としたうえで、彼女はこう言いました。「いいと思う」
なんで?と聞いたところ、答えが秀逸でした。「エジプト人はどんな肌の色の人もいるから」(Egyptians have all kinds of skin color.)
たしかに、私もエジプトを旅行したことがありますが、ヨーロッパ系もいればアラブ系もいる、アジア人とのハーフもいれば、混血が進んでいるので何系と表現が難しい人もいる。しかしみんなエジプト人です。
古代エジプトへのオマージュとするならば、どんな人種の人もその髪型にして構わない、ということ。私はこれに同意します。
つまり、文化は盗用もしない代わりに、占有もしない。