自分の既成概念と勝負する、『ユージュアル・サスペクツ』

こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!

今日も旧作、『ユージュアル・サスペクツ』(1995)です。ブライアン・シンガー監督作品、サンダンス映画祭のコンペティション外で上映され、瞬く間に話題に。

大量のドラッグと銃器を積んだ船が燃えてしまった事件。犯人を探すために前科者が集められるところから始まり、回想シーンを見ていくのです。

サスペンスは、観客をいつも「宙吊り」にしているところから来ていますが、もう最後の最後の最後まで宙吊りが続くんですよね。体に悪い。

ちなみに、敬愛する映画評論家ロジャー・イーバート氏が、低評価をつけたことでも話題になりました。話が難解すぎる、分かったとしてもだから何なのか、という感想を持たれたそうです。

『ユージュアル・サスペクツ』へのひと言

私たちの思い込みは、なかなか外せない。

作品を通じて、登場人物と観客が抱いている先入観を、うっすら感じるのです。この5人の中に犯人がいるのか、それとは別に黒幕がいるのか、この人は真実を話しているのか、でもこの人はこういう理由でちがうのではないか、など。

黒幕のイメージ映像すら出てきます。まるでアントニオ・バンデラスの怪傑ゾロのような、長いウェービーな黒髪で、血も涙もない残虐な振る舞い。

そこにあるのは私たちの思い込み。特に、アカデミー助演男優賞を受賞したケヴィン・スペイシー演じる役に、手足の麻痺がある。ここがポイントです。

どれだけ柔軟に、頭のパズルができるか、ぜひ試してみてください。犯人が分かったら、どうしてその犯人だと思うのかを覚えておくと、いい振り返りになると思います。

キャラ設定が最高

『ユージュアル・サスペクツ』の原題は”The Usual Suspects”で、「いつもの容疑者たち」という感じです。もう、この5人と周辺のキャラ設定が最高です。そのうちの3人について書いてみましょう。

スティーヴン・ボールドウィン:アレック・ボールドウィンをはじめとする俳優一家の一員ですが、私生活も含め恵まれず、主な作品は本作のみと言っていいでしょう。それを踏まえると、クレイジーでぶっ飛んだ役を好演しています。この作品があってよかった。

ベニチオ・デル・トロ:一癖も二癖もある役が多い俳優さん。公表している身長は188cmですが、キービジュアルでも一段と背の高さが目立ちます。大きいゆえの威圧感があって、独特な目の色も不思議さを醸し出します。

ケヴィン・スペイシー:1990年代、売れに売れた俳優で、作品に恵まれたと言えるでしょう。この5人の中では身体的に一番不利なものの、なかなかの頭の良さが見え隠れします。

ピート・ポスルスウェイトについて、後述します。

「コバヤシ」の魔力

ピート・ポスルスウェイトも重要な助演俳優として登場しますが、ビッグボスの伝言役としてスーツで登場し、名前が「コバヤシ」なのです。イギリスを代表する俳優さんですし、外見からは日系には見えない。そのことからも、かなりいい加減につけられたのではないかと思える役名。

しかしながら、まだハリウッド中心の映画産業の中で、日系の名前が出たことは、当時日本でも盛り上がったことを記憶しています。

加えていうと、2008年に暗号資産(仮想通貨)を創設したSatoshi Nakamoto(中本哲史)も日本にルーツを持つお名前で、いまだに謎の一人。作品公開時とは関係ないものの、コバヤシとナカモトに、謎に包まれた共通点を感じました。

Junko

1973年静岡生まれ、星読み☆映画ライター。アメリカ留学経験者、異文化交流実践者、広報コンサルタント。

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