タイトルの勝利!『キャメラを止めるな!』
こんにちは、星読み☆映画ライターのJunkoです!
7月15日に公開した『キャメラを止めるな!』(2021)。少し出遅れ、公開2週間後に見たのですが、私が向かった劇場にはあまり人が入っていませんでした。一般的な関心は薄いのでしょうか?
原作『カメラを止めるな!』の英題は ”ONE CUT OF THE DEAD” で、今回のリメイク作品は”Coupez!”(つまり「カット!」)、英題は ”FINAL CUT” とのことです。
私も『カメ止め』は公開時に拝見していますが、もう一度見直す時間が取れないままに『キャメ止め』を観にいくことに。『カメ止め』の詳細が頭に入っていないままの鑑賞となりましたが、早速ひと言に参りましょう。
『キャメラを止めるな!』へのひと言
色々と思い返した上で、ここに行き着きました。
この映画の一番いいのは、タイトル。
そうなんです、『カメ止め』のどの部分を超えてくるか、という期待感をもって見てしまうため、鑑賞後「そっか、そうじゃなかった」と自分の設定を見直すことになるのです。ストーリーも頭に入っているので、ハラハラドキドキも原作よりは下がります。
その意味で、とても忠実。もちろんプロデューサーがフランスに行ったり、通訳が入ったりとちがいはありますが、現場で起こるハプニングや愛や笑いは変わりません。
結局、カメラがキャメラになった(フランス語のRはうがいのごとく喉を震わせるので、キャメハァッとなります)というのが、最も端的にリメイクを表したということで、タイトルの勝利であります。
もし、『カメ止め』が大好きでも、『キャメ止め』にリメイクされた、と言うだけで満足してしまうオーディエンスが多いとしたら、内向きニッポンを感じるので寂しい。
アカデミー賞5冠に輝いた監督が、と言うのも触れ文句でしたが、ミシェル・アザナヴィシウス監督の過去作品は観たことがありませんでした。スパイ映画のパロディ作品で知られる、とありましたので、こういったカヴァーは得意ジャンルだったでしょうか。結果的に2022年カンヌ映画祭のオープニングとして上映されたと言うことは、シリアス過ぎず、大作過ぎず、コロナ禍において世の中に笑いを届ける「ちょうどいい」公開場所だったのだと思います。
低予算感と規模感
ここは終始気になったのですが、まず2017年にほぼ自主制作で作られた『カメ止め』が、いかに低予算だったかという部分。リメイクの『キャメ止め』には低予算感がなかったですね。
なぜかと考えてみたのですが、撮影のメインロケーションである廃墟が、廃墟っぽくない!原作は暗くて湿気でかびくさそうなのに、リメイクでは広い、そして割ときれい!ディレクターが走り回るには、とても大変そうです(あのパーカッションが聞こえてくる)。
ワタシ的には、その切迫感のなさや、空間認識のちがいが、フランスぽかったなぁと思いました。
リメイクの本領とは
映画はいつでもよい脚本を探しています。何度も製作される古典もあれば、アイデアが枯渇してリメイクに頼らざるを得ないこともあるでしょう。
『キャメラを止めるな!』では、リメイクだということも明らかにした上で、「これは日本の映画なんだ」「日本の役名を変えてはいけない」などと、原作に忠実であることがストーリーとして盛り込まれています。日本の厳格さ、ストイックさを、一つのプレッシャーとして与える感じですね。ですから原作に忠実に、などリスペクト度が高い内容となっています。
これに対して、例えば『リング』(1998)というホラー映画は、ハリウッドでも『ザ・リング』(2002)になったわけですけれども、アメリカ人が『ザ・リング』を観て自然な仕上がりになっていたと思います。私は、リメイクにはそこ、つまり翻訳、翻案部分に面白さがあるんじゃないかな〜と思っていまして。
ある文化でAは怖いけれども、別の文化ではAは怖くないからBにしよう、日本の高知県を舞台にした作品は、アメリカのワシントン州にしよう(あくまで例です)、そういう部分が映画という文化的作品に欠かせないと思うからです。もちろん、文化の属性も国だけではありません。メディアやインターネットに見る情報技術の環境は、今や世界の文化となりました。『リング』が見せる、テレビや写真を介した怖さは、簡単に海を越えた感があります。
最後の塔のシーン
こういう話をした後で、にんまりしたシーンがありました。
本作はゾンビ映画を撮影する話なのですが、ラスト、ある手法でクレーンショット(高いところからカメラを吊るように撮る)を実現します。そこに日本とフランスの色が出ていて、味わい深いです。
フランスは「みんな違って、みんないい」スタイル。そして個性的でもあります。パリが芸術の都だったことを思い出しました!
あともう一つ、これはゾンビ映画にかかわるスタッフに関してですが、アフリカ系もアジア系も登場するところ。もちろん脇役なのですが、フランスならではの光景です。サッカーなどのスポーツチームではよく見られますが、日本の映画製作現場では、どんな人材が活躍しているでしょうか。もしかしたら、アニメーションの現場では中国や韓国のスタッフなど、外国籍や外国をルーツとした方々が活躍しているかもしれませんね。
『キャメ止め』を観たら、原作観たくなっちゃったという声も、ネット上に溢れていました。私も同感、記憶が新しいうちに再度拝見します! 2作の配給会社がちがうのは、なぜでしょうね?
『キャメラを止めるな!』公式:https://gaga.ne.jp/cametome/